812. 付加価値

素晴らしい経営者から、小さな会社から今の会社に発展させた秘訣を教えてくれました。人は誰でも一所懸命に働いています。一緒懸命働いているのに会社が大きくならないことや豊にならないことに不満を述べている経営者や従業員がいます。そんな人たちに話していることがあるそうです。
 それは、一所懸命働くのは当たり前のことだということ。9時から6時まで働いて、それで発展がないと不満を言うのは間違いです。人よりも先を行こうと思ったら、他の会社よりも発展させようと思ったら、人が働いていない時間帯、例えば人が来る前の朝の5時から仕事を初め、人が仕事を終えた後、10時や11時位まで働くことです。人よりも長い時間仕事をしなければ、人よりも先に行くことはできません。同じであれば先を行っている人を追い抜くことはできません。
「働いているのに」と不満を言う前に、「人よりも働いているのか」を自問したら良いのです。他の人との能力の差は分かりませんが、働く時間の長さは自分で分かります。せめて働く時間だけは他の人よりも多く確保したいものです。
 人が寝てから余計に1時間仕事をすることは、ここから先に行く秘訣です。それを毎日継続していくことで大きな差となって現実の評価となってきます。
 またトップが気を付けるべきことは、部門の長の意見だけを信用しないことです。部門を横断する共通した項目を見る立場の人の意見を聞き入れることが大切です。コストや品質は、営業や総務、技術部門に共通した課題です。どの部門においても品質を確保していることや、コストを意識していることは、組織が発展するために欠かせないものです。企業が成長するためには、縦の組織に加えて横を串刺しするような横の部門が必要なのです。
 もうこれ以上できないと思ってから歩くかどうかが、人の差です。理由を付けて行動しないことよりも、理由はなくても行動することの方が100倍も大事なことです。言う前に行動することだけが現実を理想に近づけるために必要なことです。
 そして仕事で大切なことは、モノに価値を付けて相手に渡すことです。例えば100円の品物を仕入れたとします。自分で何の付加価値もつけないでお客さんに150円で売る行為には価値はありません。150円で売ろうと思ったら、50円分の付加価値をつけてお客さんに提供しなければなりません。その50円分の付加価値とは人によって違います。一所懸命にお客さんに商品説明をすることも付加価値ですし、お客さんにとって便利な使用方法を説明することも付加価値です。品質保証を付けることも付加価値ですし、お客さんを和ませる楽しい会話も付加価値です。そんな付加価値をつけられることが仕事の基本です。
 それに対して何の付加価値もつけないで右から左に流すことは仕事とは言いません。バブル時代の出来事です。立地条件の良い不動産は今日買って、明日売る時には値段が上がっていました。そんなバブル時代に、ある銀行がこの会社に来て言ったそうです。「東京にある、この物件を買うのに100億円の融資をしましょう。後は融資を受けてその土地を買ってもらい、その次の日に売ると150億円になっていますから、50億円の利益を得ることができます」という話があったのです。そんな時代ですから、この経営者は、当時は担当でしたが、社長にこの話を持っていきました。
 当時のその社長は、こう言いました。「○○君、100億円で仕入れた土地を次の日に150億円で売ったとして、君はそこに何の付加価値をつけられるのか。50億円儲けようと思ったら、50億円分の付加価値を付けてお客さんに売るべきものです。何もしないで50億円を儲けようとするのは商売ではありません。仕事で利益を得ようと思ったら付加価値を付けることです」。バブルを乗り切った会社には、その理由があります。
 それ以上に、今も共通する原理原則です。相手に渡すものには自分なりの付加価値をつけてからお譲りすることが原則です。何もしないで相手に渡すだけでは自分の存在価値はありません。


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