787. 天の声

その時、その場の空気を感じる懇談の機会がありました。身体に空気が纏わりつくような感覚。それを感じられたことは幸運でした。大河が流れるように、空気の流れを感じることができた貴重な時間を体験しました。時間の流れを体感しながら話し合える機会は、そう多くはありません。一生、体験できないで生を終える人もいますから、この体験ができた1時間は貴重なものでした。決して死んだものではない、生きている歴史の中に自分が存在している。そんな研ぎ澄まされた感覚がありました。
 空気と時間が身体を包んで流れて行く感覚は心地良いものです。それは自然な時間の流れに沿うような感覚です。逆流でもなく流れに巻かれるものではない、水面を漂うような感覚。現実の世界を少し高いところから鳥瞰できるような不思議な世界でした。世の中で起きていることを鳥瞰できる視点を持てると、壁をそっと抜けていけるような気がします。
 地上にいると壁は立ち塞がることがあります。その壁の向こうは超えないことには見ることができません。しかし大空から鳥瞰することができると違ってきます。大空からだと壁は簡単に超えられ(越えられ)ますし、壁の向こうにあるものが何であるか分かります。
 超人でもない限り問題を常に鳥瞰できるものではありませんが、高い視点に立とうとするだけでも違ってきます。自分で鳥瞰できない場合の対処の方法があります。それは優れた人物と話しをすることです。視点が高い位置にある人と話し合うと、地上を歩いている自分を、その位置よりも高いところに引き上げてくれます。その位置に来たことは空気の流れが変わったことで分かると思います。いつもと違った空気の流れを感じられたら、それは高い位置に立っている証拠です。
 大空に飛び上がれると、普段より壁を乗り超えることは容易になりますから、時間を超えることも可能です。

 そしてその時間をワープできる人は、言葉に力があって腹が据わっている人です。時間をワープできても、その超えた場所における戦い道具を持たなければなりません。今の時代の戦いの道具とは言葉であり、扱う言葉によってその人の力量が試されます。力のある言葉によって相手を感動させられるかどうか、それが真剣勝負です。
 現在は幕末のような状況下にあり、これから新しい時代が開けてきます。時代の名プレーヤーが繰り広げている生きた歴史から学ぶことがあります。歴史から学び天の声を聞くことができたら、何かの軌跡が残せることになります。どんな場合でも、最後の決断は天の声を聞くことです。天の声を聞くことができたらゴーですし、残念ながら聞くことがない場合は機が熟していないというべきです。
 私も天の声を意識していますが、同じように天の声を聞いている尊敬すべき人から天の声の存在を伺いました。事業で最終決断をする時は、天の声が聞こえるかどうかだそうです。大きな決断をする時は人間の範囲を超えて天の領域に入ります。天の声が人間の決断を支持するのかしないのかを教えてくれます。


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