677.希望

 知人の飲食店を訪ねました。丁度、お店用の買出しに行く前だったので時間を取っていただき話をすることが出来ました。飲食店のおかれた厳しい現状を把握することができました。結論としては、飲食店を経営していると言うよりも銀行通いをしているような毎日だそうです。売り上げが減少していることから、資金返済計画の見直しや月末の返済予定の説明など、仕事をしているよりも銀行との話し合いに時間が割かれています。

 具体的には、お店の資金として借り入れしているお金に対して、毎月35万円の銀行返済があります。理想的な姿は一ヶ月の利益の中から銀行返済分を捻出できることです。しかし一ヶ月ではこのお金を返済することは厳しくて、一ヶ月と5日程度の売り上げをもって返済できている状況が続いています。

 昨年秋からの売り上げが減少し、返済計画の見直しを余儀なくされています。銀行は待ってくれませんから、蓄えを切り崩して何とか持ちこたえているところです。「本当に厳しいよ」の一言が全てを表しています。いつも明るくて前向きで一所懸命な経営者ですから滅多なことでは弱音を吐きません。それでも精神的にこの厳しさに直面しています。

 飲食店としては過去の十数年間で8億円もの売り上げがあったようです。年間7千万円の売り上げがあれば確かに総額でそれ位になります。その時には銀行への返済は簡単でしたが、今では状況が一変しています。でも過去には決してしがみ付いていないのです。今の時間を大切にしてやり直していることが、話の何かから感じ取ることができます。

 人件費を削り店舗の形態も変更してまじめに営業しています。ですから注文を受けても配達要員がいなくなりましたから配達も断っています。事情を知らないお客さんの中には、酷い言葉もあるようです。「配達できないということは私たちの会社全てを敵にする覚悟ですね」なども言われたこともあるようです。そして大雨の中、450円の弁当配達の依頼があり、しかも食べ終わった後にプラスチック容器を回収に来るようにと指示されたこともあるようです。飲食店を馬鹿にしている事業所もあることを聞いて悲しくなりました。450円の弁当ひとつを、人を雇って配達して回収に行っていては採算割れなのです。勿論、心のある経営者ですから人付き合いをしている人であれば、喜んで採算度外視で行ってくれます。飲食店を一段下に見るような態度で注文されると、そんな気にならなくなります。

 話を終えた後、そんなことを乗り越えて今日も元気に買出しに行く姿を頼もしく、そしてまじめに頑張って生きている人を悲しませるような経済とまちであってはならないと強く感じました。このような声が届かないまちの構造があることで、まちの活性化につながらないのです。意見交換をしていて瞳が潤んで来る程でした。

 一生懸命に生きている。それが素晴らしいことであり、そんな人が悲しむような社会が狂っているのです。

 辛い話でしたが、その環境の中でも負けない姿に希望をいただいたような気がしています。困難に直面した時に立ち向かう勇気を持っていることが希望なのです。退屈な生活や単調な繰り返しの中からでは希望は見つけられないのです。


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