588.茶道文化
 和歌山市に裏千家の茶道の先生がいます。越川先生がその人ですが、本日ご縁をいただいたので会う機会がありました。格式ある茶室で約2時間、懇談を行いましたが、豊富な話題で、時間の経過は著しく速く感じました。
 先生はご縁を大切に考えている方です。私もそうですが、人のご縁は生きていく上で最も大切なもののひとつで、ご縁を大切にすることが幸福を招いてくれます。人の縁は不思議なもので、お互いが知っている周囲の人との関係があったり、出身地や生誕地が同じだったりすることがあります。前世や後世があるのかどうか分かりませんが、ご縁は世代を超えて影響を及ぼすものだと考えています。今を大切にすることが、ご先祖を敬い、子孫の繁栄につながっていくと思います。

 自分をさらけ出せる勇気、そして自然体。これが備わっているのが達人の域に入っている人だと思います。越川先生のお嬢さんのことを伺いました。先生のお嬢さんは22歳の時に飛行機墜落事故に遭遇しこの世を去っています。22年の人生。しかもその時は宝塚歌劇団に所属していた才媛だったのです。前途が開けていた彼女に襲いかかった不孝ですが、先生はその時の機長を責めることはしなかったそうです。「誰も墜落したいと思って操縦をしていた訳ではありませんし、機長もその事故で死亡しているのです。死人を責めることは到底できるものではありませんでした」と話してくれましたが、無念の気持ちを自然体に変えて吸収しているのです。道を極めた人が持つ、何事にも動じることのない強い精神力です。

 さて、私には茶道の知識はありませんが、一期一会の精神は、今を大切に、そして世代を超えるご縁を大切にすることを教えてくれているように感じています。
 それほど越川先生のおもてなしの気持ちは素晴らしいものでした。お客さんをおもてなしする精神は、茶道から来ているものか人格から来ているものなのかは別として、本当に感動させてくれる心配りがありました。
 お金や損得ではない、今日のご縁を大切にする気持ちこそが、おもてなしの精神だと思いました。いまここにいるお客さんとの会話を楽しむことに心掛けていると、自然におもてなしの気持ちになります。そこにはテクニックや駆け引きなどは介入する余地はありません。
 相手を思い、お互いに今を楽しむ気持ちこそが、おもてなしの精神です。そして上質のおもてなしとは、気品と風情を感じられる空間で、季節感と上質のものを楽しめることだと感じました。上質のものとは形がありません。味でも会話でも、器でも絵画でも良いのです。いつもと違う感覚に落し入れてくれるものが上質の時間なのです。
 日常を駆け巡っている私達は、たまには上質の時間を味わう余裕が欲しいものです。それは人生を豊かにしてくれ、精神を落ち着かせてくれます。

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