平成18年に家庭内暴力で苦しみ、どん底にいた方がいます。仮にAさんとしますが、Aさんは家庭内暴力を揮う夫から逃れ、裁判所に接近の禁止を求め、そして離婚訴訟。長い苦しい戦いに勝って自由になりました。しかし傷ついた精神は簡単に元に戻りません。カウンセリングと苦悩の日々。立ち直ったかと思ったら、また不安感に襲われる。その繰り返しの中から徐々に自分らしさを取り戻していきました。
自分との戦いは約1年間に及びました。過去の自分を振り切り社会に復帰したのです。そしてAさんが選んだのは福祉の仕事です。自ら傷ついた体験を無にしないために、他人に優しく接する仕事を選んだのです。そのため福祉関係の資格を取り、他人のお役に立つ道を選んでいます。
その二年間、Aさんが元気にしていることを私は知っています。理由は簡単です。半年に一度、Aさんが近況報告してくれているからです。
半年後。
「仕事が見つかりました。人のために頑張ります」
「良かったね。大変な経験をした分、みんなにその経験を分け与えることができると思うよ。慣れるまで大変だけれども頑張ろうね」
一年後。
「福祉の資格を取るために学校に通っています。大変だけれども楽しみです」
「自分のことで悩んでいたのに学校に通うなんて成長したね。嬉しく思います。きっと良い福祉士になれるから頑張ろうね」
一年半後。
「資格を取りました。私でもやれると自信を持ちました」
「頑張った甲斐があって良かったね。人の役に立ちたいと思って取った資格だから値打ちがあるよ。これからが楽しみですね」
二年後。
「訪問看護の仕事をしています。私を待ってくれている人がいるので遣り甲斐があります。私じゃなければ駄目だという人もいるのです」
「社会で困っている人は誰が心の優しい人なのか分かるのですよ。心の優しい人に来て欲しいと思うのは当然のことだから、そのことは自信が持てる出来事です。社会で助けてもらった分、今度は困っている人達にお返しをしてあげてね。Aさんを待っている人がたくさんいますよ」
会話が発展していることを分かってもらえると思います。立ち直って人生に前向きに立ち向かおうとしています。自分のことではなくて人のことを思いやる気持ちを持った今、もう過去には戻りませんから大丈夫です。
どん底から立ち直って社会に貢献しているAさん。素晴らしい力を持って蘇ってくれたことを嬉しく思っています。
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