「ありがたい」の意味を知っていますか。ありがたいと思う気持ちは大切なものですが、語源は案外知らないのではないでしょうか。吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」によると「ありがたい」の意味を次のような解説しています。
「このことばは、「感謝すべきことだ」とか、「お礼のいうだけの値打ちがある」とかいう意味で使われているね。しかし、このことばのもとの意味は、「そうあることがむずかしい」という意味だ。「めったにあることじゃない」という意味だ。自分の受けている幸せがめったにあることじゃないと思えばこそ、われわれはそれに感謝する気持ちになる」
「ありがたい」とは、「そうあることが難しい」こと。自分の力だけでは解決できない問題を誰かが手伝ってくれて、誰かの力を借りて解決した時に感謝の気持ちを込めて「ありがたい」と言います。有り難いとは、その文字の通り「そう有ることが難しい」ことだったのです。
日常生活において「ありがたいことです」や「ありがとう」の言葉を毎日のように使用していますが、それ程、私達は他の人の助けを借りて物事を達成しているのです。社会生活をする上で、仕事をする上で、私達は何十人の人とつながっているもので、一人では何も出来ないのです。私達は、他の人から助けてもらった時に「ありがとう」と言うように、誰かに「ありがとう」と言ってもらえる回数を増やすような活動をしたいものです。
そう言えば、ある洋菓子店に行った時のことです。経営者が店頭に出て店に来ていただいたお客さんに向かって元気一杯に「いらっしゃいませ」とお迎えし、お帰りの際には「ありがとうございました」と声を発していました。ところが店頭に従業員の方が数人いたのですが、誰一人としてお客さんに御礼の言葉を発していませんでした。これは意識の差なのです。
自分が経営しているお店の商品を買っていただいいて初めて、収入を得ることが出来るのです。ですから経営者は心から感謝する気持ちがありお客さんに向かって自然に「ありがとう」の言葉が出てきます。それに対して従業員は経営者賃金を貰っているとの意識でお客さんから直接対価を得ている訳ではありませんから、お客さんに感謝する気持ちは薄いのです。
でも賃金は経営者から貰っているのではなくて、商品を買っていただいたお客さんから受け取っていると考えるなら、言われなくてもお客さんに対する感謝の言葉が出てくるものです。お客さんへの感謝の言葉は、経営者に指導されて言うものではなくて、本当に感謝する気持ちがあって心から出てくる言葉なのです。
「有り難い」として「ありがとう」の言葉が自然に出てくる人間関係でありたいものですし、そんな関係の中から、本来ならあり得ないことが現実のものとして姿を現してくれます。「ついている」そして「運に恵まれている」のは、周囲の全てのものに対して、自身に感謝する気持ちがあるからです。
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