意識改革。組織論やチームの活性化を述べる時には必ず登場する言葉です。既存の組織
や地域社会など全ての変化を呼び覚ます鍵が意識改革です。行政改革が議論される議会の場でも、時々、市役所改革を図るためには職員の意識改革が最も大切である、との答弁を聞くことが出来ます。意識改革を図ることが組織変革を図るための手段ですから、そこで結論は出され議論は終結しています。ただ肝心な意識改革を図る方法は決して導かれないのです。
一般的には研修会参加、目標値の設定、上司からの指導などがありますが、それで意識改革が図れるようだったら、既に日本社会の多くの企業や地方自治体で劇的な変化か起きている筈です。全ての鍵を握る魔法の言葉、意識改革ですが、人が意識を変えるのは簡単なものではありません。
「自分を変えるのは知識ではありません。どんなに知識を詰め込んでも、自己啓発の場に出かけて行っても変わらない(ZEROの法則)」という主張があります。人が変わるのは、「意識的であれ無意識的であれ、人間は常に選択し、決定し、行動をするもので、その根本は無意識から生まれる思考と思いが継続したエネルギー力が加わる」ことが必要なのです。
つまり意識改革とは、知識を付与するための契機や研修会といった方法論では成し得ないもので、自分で気づくまで学習することで「無意識の内に思考を切り替えた時」に達成するものなのです。
無意識とは、「過去に起きた全ての知覚、感情、見たもの、聞いたもの、体験したことを蓄積」されたものが「予感、直感、ひらめき」となって現れるものです。自分が好む体験だけをしている人の無意識力は低く、何事にも関心を持ち受け入れる気持ちのある人の無意識力が高まります。
「全ての意識は無意識の上に築かれている」ことから、意識改革とは自分の考え方を変える必要があると思っている内は起こる筈はなく、誰に言われなくても従来と行動が変わっている状態が現れることです。ですから短期間で成果を発揮出来るものではないのです。
体験したことや、見聞したことが蓄積されることが無意識力を高めるものだとすれば、職員研修よりも仕事をする環境を変えることが効果的です。公務員の場合は、百貨店やサービス業への研修体験が有効ですし、企業人の場合は、逆に公務員体験やNPO法人の活動に参画することが異文化体験を蓄積することになります。
様々な体験を蓄積していない、結果として自己中心的な人や単一の価値を持つ集団は、意識改革を図ることは難しいのです。意識改革を図るためには、その逆を行けば良いのです。構成員には所属している文化と異なる体験をしてもらう。組織外での活動を通じて違う価値観を所有してもらうことです。無意識力を増した職員で構成する組織は、全体が変化することに抵抗がなく、異なる価値を認め合う集団となります。意識改革を意識していても組織は変わらないのですが、組織が今までの形を変えた時、意識改革は最終章を迎えているのです。
*コラム中の「 」内の文書は全て「ZEROの法則(1998.5.3)」から引用したものです。