・25年も版画を制作し続けているHさん。応接室には各年度に制作した版画が飾られています。制作点数は約100点あり全てを飾ることは出来ませんが、一色から三色までの見事な版画の数々です。驚くことに版画は若いころから取り組んでいたと思っていたのですが、本格的に始めたのは会の定年前後からだそうで、今では毎年展覧会に出展している程です。
平成18年3月には「版画で見る和歌山城公園展」を開催することになっています。今年は会員の皆さんで和歌山城を画材とした版画制作に取り組みました。そして完成したお城の作品を展示することになっているのです。
話の中で驚いたことがあります。それは3年前の74歳からピアノを始めて、昨年は演奏会にも出場したと言うのです。物事を始めるのに時期や年齢は関係ないことを教えてくれる事例です。そして練習だけだと上達しないため、レベルに関係なく演奏会に出場することが上手くなる秘訣だそうです。
演奏会に出るためには恥をかきたくないので、本番を目指して必死になってピアノの練習を続けることになります。時には手首が痛くなる程ですが、お客さんの前で演奏する自分の姿を描いて練習を続けます。それが短期間で上達する秘訣です。ピアノの先生と、今年は楽譜を読んで弾けるようになることを目指して取り組むこと約束しているようです。
平成18年末の演奏会では、更に進歩した74歳のピアニストの演奏が聞こえそうです。
・県展や市展では招待を受けている書道家の方が、書道に取り組みだしたのは50歳を過ぎてからだそうです。今迄も会合の式次第を書いてくれているのですが、会社生活の現役時代は書道をしていなかったのです。今では二科展の審査員の資格もありますしお弟子さんにも教えているのですが、開始年齢が遅いことに驚きました。先のHさんと同様、好きで物事に取り組むと年齢は関係ないことが分かります。
企業に勤めている人にとって、現役時代は人生の大切な時間を仕事に費やす時間が大半を占めています。7時間から10時間以上は昼間の活動できる大切な時間を充当しています。
仕事を抱えていると気づかないのですが、退職した後はその時間を自分のために費やすことが可能となるのです。ですから空いた時間を無駄に過ごすか、それとも好きなことに打ち込むかによってその後の人生が大きく変わるのは当然のことです。
年だからだとか、遅すぎるからと言うのは自分に対する言い訳で、人生をかけて取り組んだ仕事と同じだけの時間を十分に取れるのですから、やろうと思う気持ちがあれば年齢に関係なく取り組める筈です。
しかも、朝起きるのが辛かった勤務時代とは異なり(朝起きが辛いとは、全ての勤め人が感じている訳ではありませんが)、自分の好きなことに時間を充当出来るのですから、今度は辛い筈はありません。好きなことを辛い思いをしないで、しかも誰にも気兼ねしないで取り組めるのですから上達が早くなるのは当然です。
年齢を重ねると何かを始める時間がないと思うのは錯覚に過ぎないのです。活動に適したコアの時間が前に大きく広がっています。
そしてもうひとつ上達の秘訣は、恥ずかしがらないで展覧会などに出展することです。上達してから出展しようと思うのではなく、皆に活動の成果を見てもらうことで技術が伸びるのです。好きなことに打ち込んでいると年齢に関係なく活き活きとしています。
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