310.環境の大切さ
 人間は環境の中で生きていますから、生き方は環境に大きく左右されます。目標を持ったやる気の集団を率いる、またはその中で仕事をすると目標を達成するのは当然のこと、それを上回る成果をあげることは可能です。その集団にいることで能力を最大限に発揮することが出来るのです。
 ところがその集団でいる人を引き抜いて、全体的にやる気のない集団に持っていくと変化が起きます。最初の2年間は組織を立て直そうとして、やる気のある集団でいた時と同じような気持ちで仲間を励まし、自らも成果をあげるための行動をとります。

 ただ組織に蔓延している空気を変えるのは想像以上に大変なことなのです。
 ひとつの事例があります。親組織で十分すぎる程成果をあげた人を、子会社を立て直すために派遣された事例があります。親会社で成果をあげた人ですから、子会社で仕事をするのは簡単なように思います。ところが現実は簡単なものではなかったのです。子会社に蔓延している親会社に頼る空気、積極的に仕事をしようとしない空気の壁は想像以上で、改革は進みませんでした。孤軍奮闘していたのですが、やがてあきらめの空気が支配することになり、周囲と同じような気持ちになってしまったのです。どれだけ優秀な人を組織改革のために派遣しても、一人で組織改革を実行するのは難しいものなのです。
 実際にあったこの事例から分かるように、やる気のない組織で2年も経過すると精神的に支障をきたすか、依然と同じようなやる気を保てなくなってしまいます。それは組織内にある沈滞した空気が、やがてやる気のある人を麻痺させていくからです。自分が気づかない間に組織の空気に染まってしまい他では使えなくなってしまうのです。
 自らを燃え立たせる精神力を持っていたとしても、燃えるための動機を持ち続けるのは2年が限界なのです。燃えるためのエネルギーを供給し続けるのはそれ程難しいのです。自らのエネルギーと他人から受け取るエネルギーが交じり合うことで、やる気を持続させることが可能です。

 人は環境に左右される生き物ですから、存在する組織がどれだけ大切かを理解しておく必要があります。能力よりも環境が人の生き方を決定する大きな要因となります。意識改革によって組織を変えると良く聞くセリフですが、組織の文化を変化させること容易くありません。一人や二人他から補充しても2年もするとその組織に馴染んでしまいますから、改革どころではありません。
 環境を変えるにはトップを変えること、やる気のある複数の人を分散させないでまとめて組織に導入することが考えられます。ただ大きな組織になると、少しくらい新しい血を導入しても化学変化は起きにくいものですからやっかいです。人は環境に馴染む存在ですが環境を作っているのも人ですから、外部からの人材の導入と若い人の台頭を促すことが変革を図るための最大の方策です。

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