平成17年10月から開催してきた紀州子ども語り部育成事業の仕上げとして、今まで研修会に参加した子ども達に自分達が発表することで成果を確認してもらうために紀州子ども語り部コンテストを行いました。
コンテストでの発表者達は、開始30分前から集まってくれました。何人かと話をして発表内容を確認したところ、研修会で学んだ内容だけではなく、書籍や図鑑、インターネットでの調査も含めて深く研究していることが良く分かります。
小学校4年生から中学校3年生までの子ども達は本当に熱心に、そして真剣に発表をしてくれました。
実はコンテストの実施内容を論議する段階では、一人3分の発表時間を持たすことが出来るのか不安感がありました。紀州語り部の方との協議においては、3分発表しようと思ったら必要な知識と事前の準備が大変、複数で発表してもらわないと個人では難しいのではないかとの意見もありました。しかし研修会に参加した子ども達の態度を思い返すと、とても熱心で質問も活発でしたから一人で、そして3分程度の発表なら大丈夫だと判断したものです。ですから二週間前には、コンテストでの発表概要と研修会で使用したテキストを再度送付して、発表の事前学習をしてもらうよう依頼しておきました。
発表テーマは、和歌山城の歴史、城壁の積み石について、研修会で感じたことを中心としたお城の感想などが多く、それぞれ特長のある発表となったので感心しました。
子ども達と一緒に保護者の方々も参加してくれたのは喜ばしい出来事でした。学校の参観日のような雰囲気で、緊張感と親近感が入り混じった会場の雰囲気になりました。
結果、最優秀賞は中学校3年生の岡本千沙さんに決定しました。
岡本さんは和歌山城の城壁についてをテーマにしての発表で、そこには使用されている時代に応じて石の種類が違うことに着目した上、自分の見解を加えて堂々と発表してくれました。原稿だけを見るのではなく正面を向いて、そして用意していた石や花の写真、石の見本を示しながら聴く人を説得してくれました。
入選から漏れた発表してくれたある生徒は「あんな風に発表したら優秀賞に入るのですね。聞いていて素晴らしかったです。次回は岡本さんの発表に近づけるよう頑張ります」と話してくれた程です。
そして岡本さんには秘話がありました。実は中学三年生の岡本さんにとって今年は高校受験の年なのです。和歌山市内の公立高校を受験する予定ですが受験を予定している高校は筆記試験の他に、面接で自分が思うことや活動について面接官の前でプレゼンテーションすることが課題となっています。
岡本さんは、紀州子ども語り部研修会に参加して和歌山市と和歌山城のことを学んでいることを高校受験のプレゼンテーションのテーマとして取り上げることを決意し発表内容をまとめてくれたのです。和歌山市の歴史を学んでいることに誇りと自負心を持ってくれての行動です。彼女の本日の発表内容は、公立高校入試でも発表することになっています。高校入試に向けて紀州子ども語り部の取り組みを取り上げてくれているのですから、調査も発表レベルも高い内容となっていたことが審査員の心を掴んだようです。
高校入試の直前に開催した紀州子ども語り部コンテストに、目的意識を持って参加してくれる生徒がいたことに深く感謝し、この育成事業を実施して良かったと改めて実感しています。
コンテスト終了後の反省会では主催のNPO法人のスタッフは全員満足感に浸ることが出来ました。子ども達が不安感と緊張感の中において真剣に発表する姿勢に触れたことは、大人になって久しい私達も、人生で抱えている不安感の中においては熱意とやり遂げようとする意思が大切なことを教えてくれました。
人に与えることは与えられること、このことを忘れてはいけません。
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