276.組織は人
 和歌山市役所ロビーで、白い杖を持った目の不自由な方が市役所で用事を済ませた後、市の職員さんに介添えを受け1階ロビーまで一緒に出てきました。ロビーで待機していた警備員さんが当然のことのように近づき市職員さんから後を引き継ぎ、「バス停までですね」と優しく声を掛けて市役所の外まで同行して行きました。見逃してしまいそうな何気ない光景でしたが、新春から清々しい感じを受けました。
 この後、警備員さんに偶然お会いしたので「素晴らしい光景でしたね」と声を掛けたところ、「いつもの通りですよ」と照れながら答えてくれました。
 高齢者の方が立っている電車内で自分が座っていた場合に席を譲る行為。道中、自動車から車椅子を降ろしている方を見つけた時にとっさに手伝う行為。今日のような目の不自由な方に対して躊躇なく案内する行為。分かっていても中々出来るものではありません。一瞬どうしようか迷っているうちに他の人がお手伝いをしてくれたり、機会を逸してしまいます。思っていても行為に移すのは、日頃からやり慣れている必要があります。
 今日の警備員さんは、恐らく普段から体が不自由な方を見かけると声を掛けて用事のある場所に案内しているに違いありません。思うだけではなく自然に体が反応することが、とっさの行為に結びつきます。

 和歌山市長を訪問するお客さんに同行して挨拶のため市長室を訪問したところ、市長室に二人の助役と収入役も同席していました。例年は市長から助役、収入役と順番に挨拶を行っていたのですが、今日は一度に挨拶を行うことができたことはお客さんを中心にした考え方のように感じました。このように少しの配慮で相手に好印象を与えるものです。
 順番に挨拶に廻ろうとしていたお客さんは、短時間で挨拶を終えることが出来たので拍子抜けしたような、でも配慮に感謝しているようないつもと違った感覚を覚えたようです。  
 これらの行政機関の行為は、このまちに春を予感させてくれるものです。

 しかし一方、和歌山市が運営する和歌の浦アート・キューブという文化施設があります。ここの利用者は和歌山市の施設としては割合多く文化活動の拠点としての位置づけがされつつあります。
 しかし問題が発生していて、この施設を利用した人の評判は良くないのです。設備利用についての不満はないのですが利用者への対応が悪いそうです。全くお客さんの観点に立っていないので、一度利用したけれど二度と使いたくないと話してくれました。利用者を見下している態度で昔の役所のような管理をしているようです。市役所本庁の対応は凄く良くなっているのに、出先機関まで職員研修が出来ていないのかも知れません。
 また、ある会社がアートキューブで定期的にイベントを開催していました。和歌浦のロケーションと文化的な施設でイベントを開催することでお客さんの評判が良く、企業イメージも高められることから継続して開催していたものです。
 ところが次回から会場を変更することに決定しました。それはアートキューブの対応の悪さです。利用者はお客さんなのに、お客さんに対して上からものを言うような態度に驚くと同時に、その応対の悪さに気分が悪くなったからです。この会社でイベントに関わっている職員さんから同じような意見が出されていますから、決して個人的な印象ではないようです。
 利用される方にこのような印象を抱かせては、行政機関の信用を失墜させる結果になっています。施設の印象を職員の印象で左右されている、その結果市役所への信頼も失わせているのです。
 好事例と良くない事例を分けるもの、そのポイントは人です。建物や設備の良さではなく、全ては関係する人の印象がその組織や機関の印象を決定します。組織は人で構成されているから生き物であり、組織は人なりの格言は今なお生き続けています。

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