272.理想と現実
 学問を修了して得た知識は実社会で活かすことが求められます。知識が現場と現実に対応するのは難しいのですが、知識と現実が一体に向かうように習得した知識を発揮することが世の中を向上させていきます。
 情報化社会においては誰でも必要な知識を習得出来ますから、知識だけで優位性を保つことは出来ません。知識に加えて知恵が必要とされています。知識は共通のものですが、知恵は一人ひとりで異なります。異なるものを知識に付加することで新しいものが生まれ知識社会は発展していきます。

 理想と現実はいつの時代も異なりますが、現実に理想を近づけては絶対に駄目です。理想を掲げ知識と知恵を使って、そこに現実を引っ張るべきものです。人の一生の中では現実を完全な理想に近づけることは困難ですが、少しでも理想を現実化させるための行動を取ることが生きていることです。
 ただ、理想を描くためには現実を知るための知識習得が必要ですから、最初の一歩は学ぶことにあるのは間違いありません。なにやら堂々巡りのようですが、知識、知恵、行動、理想を掲げることは一体のもので、常にブラッシュアップさせておくことで、少なくても周囲の環境は向上していきます。

 世の中を変えることが出来るとしても、巨大なシステムなので変化の様子は感じ取るのは難しいのですが、自分の周囲が変化していく様子は体感出来るものです。自分の意識を少し変えることで周囲も今までと変わっていきます。海を熱するように直ぐには体感温度は変わりませんが、変えようとする思いを共有出来る人達が集まると、体感温度は上昇していくのです。

 誰でも自分を変えようと思ったら参加出来る機会があります。それはボランティアに参加することです。いつも思うことですが、病院などに病気と戦っている子ども達を訪問すると一所懸命の姿がそこにあり、逆に訪問している私達が励まされ生きる尊さを感じさせてくれます。高い壁に向かっていく気持ちを与えてくれ、毎日が自分の身体で、意思で行動出来ることの素晴らしさを改めて思い知らせてくれます。
 少しぐらいの困難や上手くいかないことがあっても、毎日を健康で過ごせることの幸せに感謝すべきであり、健康を意識しないで日々過ごせることの幸せは何事にも変え難いことを体感出来ます。
 難病の子ども達と触れ合うことは自分を見つめ直させてくれます。他人のお役に立つ活動は、結果として他人が自分を磨いてくれているのです。向かい合う他人が私達の心を磨いてくれることに対するお礼が、時間を割いて会いに行く行為です。
 ボランティアに参加することで少しだけ自分の意識が変わります。自分が変わると周囲が変わり、その熱意は誰も直ぐには気づかなくても伝達します。エネルギー不変の法則というものがありますが、一度暖められた熱意は消え去ることなく、地域を暖めてくれるか他人の心を暖めてくれます。姿かたちを変えて熱意は伝搬していきます。
 世の中を変えることは難しいことですが自分を変えることは出来ます。試しにまず自分の体感温度を上げ、周囲に変化をもたらすことから始めましょう。

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