271.国際感覚
 職場の希望退職制度により退職した後、夫婦で海外に渡って暮らしている方が、年末に1年ぶりに帰国し懇親会を行いました。元々定年した後に海外で生活する計画を立てていたのですが、希望退職制度が導入されたため夢を実現させるためにこの制度を活用して、マレーシアのコンドミニアムを借り受け生活しています。
 退職した後に試しに海外生活体験を行い、生活に慣れることと不安を解消出来たことで日本を離れて生活をしています。公務員として30年以上の生活をしていたのですが、1年間の海外生活を経たことで世界観が変わっています。日本を離れて生活することで得られる世界観から学ぶことがたくさんありました。

 その一つは、世界は既に国境を越えたボーダレスの時代に入っていることです。マレーシアにいるとシンガポールやカンボジア、ベトナムなどが隣接しているため国内と同じ感覚で移動しています。国境を越える感覚が良い意味で希薄なので、交流により違う国の文化や考え方を、海外研修などの機会がなくても日常の中で吸収出来るのです。これは世界で仕事をするうえで大きな利点になります。異国人が地域にいるのが当たり前で、日常的にも仕事などの交渉の相手は、自国の人だけではなくフィリピンやシンガポールの人達がいるのです。違う国の人との交渉に慣れていますし、誰に対しても臆することなく話を進めることが出来ています。
 日本は島国ですから国境が明確で、海外イコール海の向こうですから外国に行くのは国内の仕事とは違う感覚を持っています。また地方都市にいると日常生活の場では外国人と会うことすら珍しい出来事なのです。東南アジアは文化圏としては一体で将来的には域内経済を強化するために通貨統合の話を聞いたりしますが、日本にいて仕事をしている限りにおいては実現の期待感も東南アジアとしての一体感は感じません。

 ところが東南アジアに暮らしていると交流の機会が多く経済圏は一体になる可能性を感じるそうです。隣の国まで地続きで、1時間程度で行けるのであれば、私の住む和歌山市から大阪市内に入るのと同じ感覚ですから、外国といっても遠くへ行く感覚はないのは当然です。
 さらに子どもの頃から交流の機会に恵まれていることから、教育を施さなくても国際感覚を身につけられるのです。日本の次の世代が、世界を相手にするには決して有利な環境にはありませんから、能動的に国際交流の機会を持つべきです。
 ボーダレスの感覚を持っている東南アジアの人達と付き合うためには、閉じこもっていずに海外に出て行く機会を持つことが大切です。どれだけ国内で国際的なことを学ぶよりも、海外に行く方が国際感覚を身に付けられるのは当然だからです。

 もうひとつは、英語が出来て当然だという考え方です。東南アジア諸国を渡り歩いたことから分かったことは、東南アジアの人達は自国語以外に英語が出来るというものです。日本の小学校1年生の年齢から学校では英語教育を取り入れています。一緒に懇談した対人と韓国人とも話したところ、英語が出来て当たり前で出来ないと恥ずかしい感覚を持っているそうです。
 韓国でも若い人達は英語を話せています。それは韓国では幼児の段階から英語教育を導入しているためで、国際社会で活躍する人材を輩出するためには早期教育の重要性を国の指導者が理解していて、将来の国の反映のために掛け声だけではなく実現させているのです。英語教育に関して実施出来ない理由をつけて後回しにしている姿勢はありません。
 最近では、自国語と英語を習得するのは最低ラインで、国際舞台を目指している層は中国語を学んでいるそうです。これからの市場を見ると中国が重要だと分かっていますが、日本にいると公的に具体的に中国語を習得せようとする動きは見られません。参考までに日本語を学習している人は東南アジアや韓国では少ないのが現実です。英語と中国語が出来れば国際社会で仕事が出来ると認識してのものです。

 時間的に見ると外国語を習得するための期間は3年程度です。3年で初級から上級まで段階をクリアして実践で活用出来るレベルにまで持っていっています。決して特殊な能力を持っていなくても、英語が出来ることが活躍するための条件だと認識しているため語学力が向上しているのです。
 公的に子ども達に外国語を習得させる方針を示しているアジア諸国では、三ヶ国語を操っている人は珍しくありません。マレーシアやシンガポールでは、日常生活でも自国語よりも英語で話す場合が多くなっていると伺いました。
 海外生活を送っている人や外国の方と交流する機会があると、日本の感覚が世界と違うことを実感出来ます。

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