256.適応
 過去日本の企業組織はピラミッド型の階層になっていました。お客さんの意見を受け付ける営業所では、最初に担当者に意見が届きます。その後、班長、係長、課長、所長と意見が上がり、要望に対する営業所としての方針が決定されます。現場所長の権限内であればお客さんへの返答が可能ですが、上位機関が権限を保有している場合は、支店・支社へ方針を伺う必要が生じます。
 支店でも同様のステップを踏みます。支店担当者、係長、課長、支店長へと伺いが立てられていきます。この場合でも、支店権限を越えた場合は本店にあがります。
 このようにお客さんから意見が寄せられても、段階を踏むために返答するまでに時間を要します。このため返答が遅くなったり、貴重な意見を改善に反映させられない場合が生じています。ピラミッド型組織の場合、何段階も方針が通過するためチェック機能が働き、より良い方針を決定する利点がありますがスピードに欠けるのが難点です。
 また担当者から権限者の間に機能していない職位があると、単にスピードを減速するに留まり、お客さんにとっても企業にとっても良い結果を導かなくなります。

 お客さんの意見を取り入れ改革を進めている企業では現在、従来の組織は残しつつもスピード化を図っています。それは職位ではなく、出来る人や実行権限のある人にダイレクトに方針をあげることでスピードアップを図るものです。お客さんの意見を聞いた担当者は方針を立案し、権限者に直接相談し伺いを行うものです。機能していない中間層への書類通過をカットすることで速く実行出来ることになります。

 つまり実行出来る人とダイレクトに話し会社方針を決定することで、お客さんは満足を得られ将来も顧客に留まってくれるのです。一気に組織構成員の意識を変えるのは難しいため、当初は出来る人と案件に応じて個々で対応することになり、組織的に変革を行えるのは数年後になります。
 下位職から順番に上位職に方針伺いをすることに固執しているようでは組織の変革は出来ません。仕事は当該案件を解決出来る人同士でやる、企画を進められる能力のある人同士で行うことで、迅速で良い企画に仕上げることが出来ます。
 メールやイントラネットは出来る人同士を結びつける手段です。ITツールを活用することで、決定のスピードを加速させる小さな組織に向かいます。 
 お客さんの要望に応えるには、そして企画力を強くするためには小さな組織にすべきです。ここで言う小さな組織とは人を減らすことを意味しません。階層を減らすことでスピード化を図り、不要な役職位は無くして能力に応じた必要な箇所に異動させることで人材の活用を図ることです。
 従来の形に囚われることなく、お客さんとITなど外部環境に適応させることが活きた組織です。

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