217.知的財産
 日本製品の侵害品原産国の47%は中国で、知的財産侵害の問題拠点は中国となっています。産業別に見ても、電子・電気製品、一般機械、雑貨を初めとする全業種にまたがっていますから安全な産業はありません。模造品が出回っているのを見つけて処置をしていますが、もぐらたたき状態で国際的な戦略を講じないと効果はありません。部品製造工場を発見しても複数の工場で部品を作っているため意味はなく、侵害者の首謀者、首謀組織を叩く必要があります。価値のあるターゲットを狙うことで再発を防げますが、証拠を固めておく必要があります。それは、部品を見つけても模造品で使用するのかどうか分からないからです。部品だけでは模造品と見做すことは難しく、組立工程で偽のブランドマークが刻印されて初めて模倣品だと分かりますが、この時点では手遅れになる場合があります。
 模造品が出回る前に押さえるためには、工場よりも首謀組織のコンピュータのハードディスクなどを見つけることで、これらは重要な証拠品となります。

 知的権は国内外で登録しておかないとハイジャックされる危険性があります。ハイジャックとは第三者が商標などを登録することで、権利者の商標を強奪することです。第三者は、製品のリバースエンジニアリング(製品を分析し構造や製法技術情報などを探知すること)により登録するため、権利者は商品が市場に出る前に出願するなど対応策を講じるべきです。知的権をハイジャックされると、権利者が主張出来ないばかりか、ハイジャックされた登録を買い戻すために高額の費用がかかることになります。自分の知的財産を使用するのに権利を買い戻さないと使用出来ないのがハイジャックの怖いところです。

 中国で知的財産がハイジャックされた実際の事例を挙げてみます。スターバックスは中国で侵害される恐れがあり考え得る45の商標登録を行いました。ところが中国読みでの社名「XING BAKE」の登録が漏れていました。この名称を中国企業が商標登録を行い、中国でコーヒーのチェーン店を展開しています。スターバックスがこの中国企業を相手取り提訴していますが時間がかかっています。

 他の事例として、韓国の自動車メーカーの「XYUNDAI」が中国語読みの「XIANDAI」の商標が中国企業に先行登録されていました。そのため知的権の権利を買い戻すのに480万USドルも要しました。名称に480万USドルを支払ったのですが、中国読みの社名にそれだけの価値があるのかは疑問です。先に商標登録しておけば発生しなかった費用だからです。

 もうひとつ、自動車の事例です。アメリカのGMがSparkという車を発売しています。ところが中国企業のCheryがQQという車を発売していて、このデザインも部品も全てSparkと同一なのです。殆ど同じなのに同時に中国市場に出回っています。GMは提訴していますが、未だ結果は出ていませんから注目です。
 
 これらのハイジャック事例から予防が大切だと分かります。予防手段としてはまず先手を取ることで、必要以上の権利登録、官報のチェックなどを行うべきです。ハイジャックされたら登録の買戻しをする必要がありますが、これは高額を要求される可能性があります。またハイジャックされた知的財産の取り消し訴訟は困難が伴い費用がかさむこと、対応を早急に講じる必要があるため困難な面があります。これらを防止するために知的財産保護のために危機管理計画を立てておく必要があります。

 危機管理として侵害品の法的措置は、輸出先を発見しその国の税関で処分させること、行政措置を行うこと、民事訴訟、刑事訴訟の4つの方法があります。ただいずれの場合も簡単にはいきません。

 税関における押収で必要なことは人間関係だそうです。押収を中国政府に依頼するのに、申請を出して税関局の職員に親切丁寧に説明することが大切な要素です。税関局の職員は良い仕事をしたいと思っていますが、人が少ないことと扱う量が多いことから仕事が嫌になっている場合があります。そのため人間関係を築いて丁寧な応対と依頼をすることで動いてくれます。どの世界でも人間慣例は重要なことが分かります。

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