企業は一時期からの低迷期を脱しつつありますが、少し先に問題になるべきことがあります。それは2007年問題です。
この2007年問題とは、企業や組織内で知識と技術を持った従業員の方々が一斉に定年の時期を迎える時期で、貴重な知見が定年退職と共に企業から失われることを意味するものです。この世代が日本を支えてきた通称団塊の世代ですが、既に東南アジア系の企業からスカウトに来ている事例があり転進されている方もいます。
少し前までは企業が生き残るためにリストラを断行し、主に50歳以上の経験豊富な従業員をリリースしてきたのですが、その方達が貴重な戦力だったことに気がついています。企業が生き残るために人材を手放したのですが、企業そのものには知識や技術が少なく、企業が欲しているものの多くは、従業員個人が所有している知識や経験、技能やノウハウなのです。
外資系企業はそれらの技能を有している人を簡単に入手しています。日本企業が長年を要して育ててきた人材を、それらの企業はお金も時間もかけないで戦力として活用し、日本企業の脅威になるところも出現しています。製造業の分野では人件費が安くて豊富な東南アジアの企業に太刀打ち出来ないため、知識集約産業でリードしようとしているのに、その人材が海外に去っている現状をどう判断すれば良いのでしょうか。
人脈や仕事を通じて養われたノウハウは企業や組織の財産です。かつて私も仕事上で、個人が持ちそれら無形のものを企業共通の財産にしようとしたのですが、有形のものに置き換えることは難しいことが分かっています。人と共に付き合う企業や部署は違ってきますし、仕事に関するマニュアルがあっても同じ成果が現れない場合が多いのです。
まさに企業や組織は人なりだと言うことが分かります。今になって人材こそ財産であることが分かりつつあります。人材を大切にしない企業は名前が残っても中身がないものになります。
私達はひとつの企業内でいると特定の業種だけでしか通用しなくなることを恐れていますが、実は仕事を通じてノウハウと技能、人脈を形成出来ているのですから、自信を持って今の仕事を行うべきなのです。自分の中に溜め込んだこれらのものは、誰にも盗られることはありませんし、多くの企業や求めるノウハウとなり得ます。
2007年問題でスカウトされる人材があるように、知的財産を所有している人材は得がたい存在になります。仕事を通じて自分を磨き高めることが人材への早道です。ますます組織力が個人の力となることを理解して欲しいものです。