若くて行動派の学者と自ら起業した経営者と話す機会がありましたが。学者はゼミを通じて学生と交流を行なっていますから、各人の社会適応力についての観察力を持っています。早い段階で就職を決めてくる学生は、ゼミでも自分の考え方を進んで発言しているように、積極的な姿勢が企業に評価されると考えられます。
新進の企業経営者が求めるのは、学生時代に習得した技術ではなく他者とのコミュニケーション力です。どれだけ技術力があっても、お客さんとの対応がまともに出来ないような学生は必要ないと考えています。お客さんと最初に接するのは営業を通じての機会が多くあります。その時に良い印象を持っていただかないと仕事につながりません。まず営業があって次に依頼によりシステム開発などの仕事が存在します。
学者も経営者も営業力の大切さを理解しています。どれだけ優秀なシステム開発者でも、オタク的な人だったら仕事を取ることは難しいのです。お客さんか何か聞かれても満足を得られる回答は返せないからです。まず信頼されることから仕事の関係は始まります。パートナーを組む、或いは一緒のプロジェクトを行なう場合、信頼できる人と一緒であればそれだけで成果が出る一歩を踏み出せます。その信頼とは、第一印象と出会った時の挨拶で決まることがあります。気持ちの良い挨拶は信頼出来る人の必要条件です。
企業は人材に尽きます。信頼出来る少人数で起業し、時代に沿った良い発想と行動そして営業力があればやがて軌道に乗ってきます。ある程度の規模までは企業を大きくする事は可能です。問題はそこからです。信頼出来るチームのような規模の内は、お互いのコミュニケーションが取れているので意思疎通が図れて仕事は順調に進みますが、仕事量が増えるに連れて従業員を増やす必要が生じることになります。その結果、仕事の精度は低下し企業規模の拡大は止まります。
営業力で仕事はどれだけ取れても、従業員の質を一定の水準に保たないと規模を拡大することは出来ません。志を同じくし、創業当事の人材と同程度の能力のある人材をどれだけ確保し続けていけるかが企業成長の鍵となります。
大企業なら新卒者の人材を継続的に補充することが可能ですが、新進の企業が安定的に人材を集めるのは大変なことです。しかも経営環境変化が激しいため、大企業のように時間をかけて仕事を覚える訳には行きません。数ヶ月で先輩達のノウハウを盗む能力が求められます。
次に難しいのは、後輩が入って来た時の指導です。アルバイト数人を指揮するのなら誰にでも出来ますが、従業員数人を指揮するためには仕事力だけでは不足で人間力が必要となります。ここでは、信頼されること、相談しやすい雰囲気があること、誰にでも挨拶が出来ることなどの力が試されます。
初期の段階では他者とのコミュニケーション力が求められ、部下を指揮する段階になると人間力が求められ、会社を大きくするためには環境変化に対応できるしなやかさを持ち合わせる人が求められています。
人は会社や組織の規模、活動するレベルに応じて求められる能力は違ってきます。時代や社会が変わっても、企業や組織で通用する人に求められる資質には普遍性があるようです。
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