今春ある大学の学部を卒業した方からお礼の連絡をいただきました。無事卒論を仕上げて卒業したのですが、以前、卒論を作成するに当って書き方が良く分からないので指導して欲しいと相談がありました。この方は技術系の大学を卒業後、改めて文系の学部に進学し直しています。そこで論文に突き当たって相談があったものです。当事、実際の論文を基にして書き方の基本とテーマ選定、そして論文の考え方をアドバイスしたのです。
私はそのことを忘れていたのですが、今日の連絡で当時のことを思い出しました。昨年の卒論に当っては殆ど指導教官の指導を仰がないで書き上げることが出来たそうです。最終段階でも微調整に留まり、骨子や組み立て方の指導不必要な位でした。卒業に当って担当教官から「卒論なのに修士論文でも通用する内容だった。出来れば大学院に来ないか」と誘われたそうです。この言葉は自分のことのように嬉しいものです。
通常難関となるのが卒論ですが、悠々と通過出来たのは早い段階から準備があってのことです。そして少しでもアドバイスが活き、レベルの高い論文に仕上がったことは嬉しい限りです。
論文は通常、起承転結をまず描きます。自分なりの結論を定めておいて、その結論を導くための構成を行ないます。同種のテーマで書かれた過去の文献は当然のことながら読んでおきます。
また論文に必要な資料とデータは、自分が導こうとする結論に合わせて収集を行ないます。ただデータは何でも良いものではありません。例えば論文で「経済は物価の下落傾向は止まらず依然としてデフレ経済にありますが・・・」との記述をするとします。それに対して消費者物価指数の下落傾向の数値を並べても、学者なら誰でも知っている数値なので作成者の個性は出ません。
それよりも研究対象としている個別のモノに焦点を絞り、証拠を示すことで少しの驚きがあり他の論文との違いを出せます。「デフレ経済下であっても美容に関する意識は高まり、皮膚科での医学的根拠のある美容に関して支出する医療費は増加傾向にあります。また自己啓発に関する支出も増加していることから、仮に所得が減少しても自己への投資意欲は増しています。そこにビジネスチャンスが発生すると・・・」と論じて、美容と自己啓発に関する消費データを記載することで論点が絞れ、新しい論証となり得ます。
但し、一度は自分の結論と異なる事例を引き合いに出して「なるほど・・・しかし」で否定するだけの論証を行ないたいものです。そして、他人の資料だけでは客観的で面白いものになりませんから、自分の経験や実証のための実験データなどを織り込むことで他と違う論文に仕上げることが出来ます。
さてこの方は今回、諸事情から大学院への進学は見送ったのですが、どうしたら良いかの相談がありました。それに対して、教官から誘いがあるのは見込みがある証拠で、学部と修士課程では全く学問の濃さが違うので、人生において必ず役立つから、事情が許すなら来春にでも進学すべきだとアドバイスをしました。
何事も出来る時にやっておかないと一度見送ればチャンスは再び巡って来ません。チャンスをつかむと何度でも訪れてくれます。チャンスは公平に訪れてくれるものではなく、挑戦し続ける分だけ訪れてくれます。
宝くじを購入すれば、最低限当選するチャンスは得られます。購入しないと永遠にチャンスは訪れません。これと同じで、挑戦する姿勢を持つことがチャンスを引き寄せます。また新しい挑戦を始めると再びチャンスは巡ってきます。行動していると常にチャンスを捉えられる状態にあります。
活動の場を拡げることでチャンスと遭遇する機会が増えるのは当然のことです。極論すればチャンスのきっかけは人との出会いです。必要な時期に必要な人と出会うことがチャンスです。ですからチャンスを得ると言う幸運を使い切ることはなく、使えば使うほど幸運は巡ってきます。
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