161.経営者の視点
 和歌山市を代表する企業の島精機製作所は、島正博社長が高校時代の18歳の時に編み機を研究したことがきっかけにして立ち上げた会社です。以来、社長が68歳に至る今日まで会社経営を行なっています。昭和30年当事はオートメーションの時代でしたが、手袋編み機を機械化するのは不可能とされていました。
 それは手袋の単価が安いことから初期投資に大きなお金を掛けられないこと、5本指の編み方を機械で制作するのは技術的に難しいと思われていたことが原因です。当事、島精機は資本金100万円だったのに6,000万円の借金を抱えて自動編み機の開発に取り組みました。資金と技術はなく夢だけを持って10年、とうとう自動編み機試作機の開発に成功しました。そうすると現物の機械が存在していないのに、試作品だけを見て注文が舞い込みました。この試作品だけで、借金に相当する6,000万円以上の注文があったのです。
 不可能と思われていた自動編み機の開発に成功したことで、実物がなくても収益が見込まれたのです。開発する実力もお金もなかったのに、夢を持ってチャレンジしたことで夢が現実へと実現に向かったのです。
 
 別の会社の事例ですが、創業時何も誇るべき製品がなかったのに、東京の展覧会にブースを出展しました。他社と比較して恥ずかしい思いをしましたが、他者の考え方や目指すべき製品を知る意味でも、悔しさをバネにする意味でも効果がありました。
 一歩を踏み出さないと何も前に進みません。自分に誇るべきものが見つからなくても、準備不足でも、思い切って実力を社会に問いかけてみる勇気が必要であることを教えてくれます。

 自己の取り組みも去ることながら、情熱を持つことで周囲から助けてくれる環境が醸成されていきます。技術も資金も自信も、何もなくても夢の実現に向けて行動することで、自分も周囲も物事は好転し始めます。地球は1日に1回転しているように、私達は1日経つ毎に1日分前進するよう心がける必要があります。

 島社長は、学歴も才能も資金も何もなかったのにチャレンジ精神だけで会社を築くことが出来たと語ってくれました。実は創造力と実行力があることで今の地位があるのですが、今でもとても謙虚に自分を捉えています。
 ここで学ぶべきは、一般的な生活をしている人が社会の中心ですから、ごく当たり前の視点持つトップが最も優れているということです。全てを自分で決められると思い、当たり前のことを感じる視点を持たないトップは優れているとは言いません。

 現代社会では、情報に地域格差はありません。むしろ地方にいる方がコンピューターハウジングや運用コストは安価に仕上がりますから優位性があります。国内でビジネスをしようと考えたら東京が優位ですが、世界を相手にするには地方が優位に立ちます。世界から見れば、東京以外は日本国内どこでも同じようなものです。特に、和歌山市は関西空港から30分と恵まれた立地ですから、世界を相手とするには絶好の地域です。
 繰り返しますが、情報社会は地域間格差をなくしますから、熱意とアイデア、そして実行力が差をつける条件です。和歌山市には企業が少ないので、世界を相手にするために優秀な人材を一箇所に集められる環境があります。他と比較しないで自分の視点で物事を捉える習慣を身に付けることで、一見不利な状況でも優位性に変えられるのです。
 どのレベルで夢を描けるかによって、現実社会でのレベルは異なってくるのです。

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