規制改革と公的施設運営などの民間開放が進められる結果、民間企業の前には50兆円の市場が誕生します。公民館やスポーツ施設運営、ハローワーク事業家ら刑務所運営などの官業を開放する方向に社会は流れ出し始めました。これは100年に一度の大改革で、地方の企業にとって官業への参入機会は大きな狙い目です。
既に官業が民間委託されている先進地があります。赤字続きの観光施設や公園などの公的施設の管理運営を民間に託し再建を目指しています。
北九州市の門司にある海峡ドラマシップと九州鉄道記念館は、年間3億円の赤字を生み出し将来も同程度の赤字が見込まれていました。海峡ドラマシップは大正時代の門司の街並みを再現した博物館で、九州鉄道記念館は九州の鉄道の歴史に関する記念館です。市の財政悪化を防ぐために、北九州市は指定管理者制度を活用して民間企業に運営を任せることにしました。
この公的施設の管理運営は、地元4社による企業連合が請け負いました。企業連合は、施設が採算に乗らないのは施設に魅力がないからではなく、運営の問題点を見直しすれば黒字化出来ると考えました。採算面での勝算見込みもありますが、赤字施設の運営に応募したのは郷土愛が原点です。地元出身者として門司の復活に貢献したいと思う情熱が彼らを動かしました。現在、11人の社員で運営していますが、北九州市の運営は13人で行っていたことを考えても、既に人件費だけで1,000万円以上の削減となっています。
山梨県の大型レジャー施設「丘の公園」は1993年以降10年間赤字が続いたため、2003年11月に指定管理者制度により民間委託されています。施設運営に関して、ハード面の問題はなかったのですがサービス面が問題でした。お客さんが来ても会釈する程度なのに、県の役職者が来ると並んでお迎えする体質があったことから職員意識改革に取り組み、職員研修を繰り返した結果、接客マナーが向上し始めました。
常連のお客さんからの評判が良くなったのは2004年7月頃からでした。民間になるとこんなにも違うのかとお客さんから意見を聞くと、従業員の態度が更に変化し始めました。売り上げは対前年比10%以上の伸びを示し、県に施設使用料を支払っても黒字が見込めています。
このように赤字財政に苦しむ地方自治体の公的施設の開放が、地元企業にとってビジネスチャンスとなり地域活性化にもつながっています。その上、地方自治体の財政赤字解消に役立っているのです。
国レベルでは、資格認定や税の徴収、貨幣の印刷までもが民間開放の検討範囲に含まれています。地方発の官業開放を進めないと指定管理者制度までもが国の指揮下に入ってしまいます。
指定管理者制度に関しては、2006年9月までに移行するように総務省から指示が出されています。そのため2006年4月までに、指定管理者の指定と委託契約を終える必要があります。実務面では、2004年12月議会までに指定管理者任命についての議決をしておかなければなりません。そこから逆算すれば、2004年9月までには指定管理者の募集を行わないと時期的に間に合わなくなります。
参考までに全国の地方自治体の公的施設は約40万件あります。抵抗はあるでしょうが、一旦社会の流れが決定すれば動きは加速されます。財政赤字を抱えながらも指定管理者を導入しない地方自治体があるとすれば、何が行政改革なのか疑問に感じます。
規制されてきた仕事を、誰でもアイデアがあれば参画出来る機会を提供することで地域に活力は生まれます。運営に関するコスト高と住んでいる人にとって選択の余地がないシステムという既得権益に別れを告げる時期は迫っています。
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