95.リゾートの定義
 リゾートとは繰り返して行くことを指し、語源は温泉から来ています。温泉を英語でスプリングと言うのは、世界で始めて温泉が出たベルギーの地名から来ていて、風呂をバスと言うのはイギリスで温泉が湧き出た場所から来ています。
温泉に行くことが欧米人のリゾートだったのです。ところが19世紀に入るとイギリスの医者が、温泉よりも海水のほうが健康保持に効果があると発表したことから、王侯貴族がリゾートの対象は海に変わっていきました。王侯貴族が海に行くようになると一般国民の関心も海に向き、海岸にあるまちブライトンはリゾート地として発展していきました。

 すぐれた観光地とは、訪れてくれた人が何故か分からないけれどこのまちは良いね、と感じてくれるまちのことです。言葉で表現できないようなまちと住む人の雰囲気が観光のまちとして必要です。長野県に小布施というまちがあります。セーラさんが移り住んでいることで有名になっていますが、ここは観光のまちとしての雰囲気を持っています。
 
 これは行政が意図的に仕組んだものではなく、歴史が育み根付いたおもてなしの心があるからです。かつてこのまちにはひとりの豪商が住んでいました。この方は文化に理解があり文化芸術に惜しみもなくお金を支出していました。小林一茶や葛飾北斎もここを訪れています。そのおもてなしの気持ちが小さなこの小布施のまちに住む人に浸透していったように、他者を排除しない文化はまさに歴史が育んだのです。このように観光地で最も大切なものは近代的な建物を作るのではなくおもてなしの気持ちを持つことです。

 和歌山市は海に恵まれ国際空港が近く、徳川家の歴史があります。観光学的に見ると、ここで観光が上手く行かなかったらやっている人の責任であるとなります。恵まれた所ほど知恵が出ないこともあります。
 観光には四つの要素がありこれを10とすれば、賦存資源が1.3、活動資源は2、宿泊資源が2、空間快適性資源は4.7となります。つまり空間快適性を満たすことが大前提で、これは訪れた人がまちを歩いていて何となく良いね、の感覚を持ってもらうことです。心理的影響が大きく数値化できない要素で、そのまちが持っている雰囲気です。まちが持っている雰囲気は、歴史と文化それを受け継いでいる住む人に左右されます。まちは住む人の品性とイコールのような気がします。
 良いリゾートがあることとまちの発展はセットものです。ビジネス都市でない限りリゾートがないとまちの発展はあり得ません。リゾートとは休息出来る環境だけでは駄目で、集中し緊張してクリエイト出来る環境を持つことが求められます。
 まちの究極の目的はブランド化を図ることです。宮崎県の綾町の野菜の価格は高いのですが、安心できるためいつも市場で高く取引されています。ブランド化を図ることでまちの風格があがりますし、付加価値がつくので経済的にも安定していきます。

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