中国には「水を飲む時には井戸を掘った人のことを思いだせ」ということわざがあります。後に続く人は、最初に苦労してしくみを築いてくれた人に感謝する気持ちを忘れないようにと言うものです。
済南市と和歌山市が友好提携したのは1983年1月14日。現在12都市と姉妹提携している済南市にとって初めての姉妹提携都市が和歌山市です。ですから和歌山市は特別な存在で、最初に井戸を掘ってくれた都市として尊敬してくれています。
山東省の首都済南市は、人口575万人、面積8,227u、位置は黄河流域で2600年の歴史を持ち、明の時代から省都となっています。
済南市の課題は市場経済化による失業者対策です。失業したので仕事を与えてくれと陳情してくる市民が非常に多くて対応に苦慮していることです。市長に対して直接、仕事を求めてきますから、その対応に時間をとられています。済南市では、今までのような個別の失業者対策だけの施策から、全体の福祉を充実させるように施策を転換する必要に迫られています。社会主義から市場主義への転換期にあることを実感させてくれます。
ただし済南市は公共施設が充実しています。病院、学校建設なども十分に行われていて、市民サービスは充実しています。特に大学は20校もある上、中国で5番目に古い歴史を持つ山東大学もあり教育にも力を注いでいます。575万人の市民への行政サービス提供は大変ですが市場化の進展と福祉行政の両立という課題に挑戦しています。
山東省が誇る世界文化遺産は泰山です。自然の世界文化遺産ですから和歌山県の高野・熊野と同じ位置にあり、観光行政のあり方については共通しています。
つまりどちらも自然の世界文化遺産ですが、自然だけではなく優れた歴史的背景を持つことです。泰山は神の山で中国の歴代皇帝達が即位するに当たってここを訪れることになっていました。歴史上72人の皇帝が、当時の首都西安から二ヶ月をかけてここにやってきました。神々しい山の力を信じて、一人で7回も訪れた皇帝もいるようです。当時ここを登らないと男ではないと言われ、詩人達や政府要人も訪れ壁面に漢詩を記していて今も見ることができます。
高野・熊野が熊野信仰の道として、歴代上皇や天皇が京の都から訪れたのと良く似ています。自然信仰の聖地としての意味を持ち、同省と県のシンボルとして世界文化遺産に指定されたのも姉妹提携が先見の明を持っていたことを示しています。
今も中国全土から人がここを訪れているように、高野・熊野にも長く日本全国から人が訪れてくれるように、精神的文化を伝える必要があります。
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