メジャーリーガーのイチローが2004年10月1日、メジャーリーグでの最多安打記録を更新しました。第一打席でヒットを放ち257本でメジャータイ記録、第二打席もヒットで258本の新記録を達成しました。さらに1本を加えて259本でこの日の試合を終えました。
ジョージ・シスラーの記録を84年ぶりに更新したのですから、歴史的瞬間を私たちは目撃したことになります。言葉で表すと「凄い」の一言です。
記録の面でいうとメジャーリーグの歴史を掘り起こし、古い名プレーヤーの存在を知らせてくれるなど、メジャーリーグを私達に身近なものにしてくれました。
一方で、余りにすばらしいイチローの活躍でメジャーの歴史を浮き彫りにしたため、日本のプロ野球を遠ざけてしまった気がします。人は最高峰のものに惹かれます。それは自分も自分のいる世界での最高を目標としているからです。一度レベルの高いものを目撃すると今までのものは色あせて見えます。
野球の世界では、最高の舞台で最高の技術を発揮しているのがメジャーリーグです。スピードとパワー、誰でも受け入れる姿勢と機構全体が反映するしくみを突き付けられると、日本プロ野球には関心がなくなります。イチローの記録更新の話題の間にセリーグ優勝が決まっていましたし、パリーグに至ってはシーズンの優勝よりも三位争いというレベルの低い所に注目が集まるなど、最高のものを目指しているプロとは言えない争いをしていました。シーズンを通して最高の結果を求めるのがプロなのに、それを否定するルールに特定球団のファンを除いて熱狂はしません。
イチローの新記録は歴史を蘇らせ、最高レベルで戦うことのすばらしさを示してくれました。最高の記録はそれ以外のものを遠くへ追いやりました。
9月中旬から今日に至るまで、その打席に多くの人が熱狂してきました。日本中の人に夢と希望を与え続けているイチロー選手です。本人は全力でプレーをしているだけでしょうが、その姿は私達に影響を与えています。夢を持ち努力を続けていれば、その夢は叶うことを行動で示してくれています。
単なる記録更新ではなく、大きくて困難なものに挑戦している姿に感動します。
私達は、困難を避けようとして無意識のうちに無難な道を選択しがちです。夢があっても、継続して追い求めるには強い精神力が必要です。少しの障害で挫折することも多々あります。私達がそれぞれ追い求めている夢を、イチローはメジャーリーグという舞台で見せてくれています。彼を見ているとやれば出来ると勇気が沸いてきます。イチロー選手が天才で特別だと思ったらその人はそこ迄です。分野は違っても自分が出来るフィールドがある筈ですし、今なければ自分で見つけるための行動を起こさなくてはなりません。与えられている時間は限られています。
イチロー選手のインタビューの答え期待以上のものでした。(本人が発した正確な言葉ではありません。主旨を私がまとめたものです)
「プレッシャーから逃れる方法はありません。プレッシャーを背負って試合に臨んでいます」
プレッシャーなのかストレスなのか、捉え方次第なのです。
「ドキドキ、ワクワクを味わえる、プレッシャーを感じられるのは最高です。それを感じられるのは幸せです。それを避けたいと思っている人はつまらないですよ」
日常生活でドキドキ、ワクワクを感じられる場面は少なくなってきます。たまに訪れるそんな瞬間を楽しむことが幸せにつながります。プレッシャーは感じないのが良いと思うよりも、プレッシャーのある場面を楽しみたいものです。プレッシャーのかかる瞬間も人生においては少ないのですから。
「小さなことを積み重ねるのがとんでもないことに辿り着く唯一の道」
夢にたどり着くのは小さな努力の積み重ねです。小さな目標を定めて結果を出すことが大きな成果につながります。
「今までの野球生活の中で最高の瞬間でした」などです。
人生の中で最高だといえる瞬間を迎えられることは幸せなことです。私達もそれを味わいたいものです。
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