41.DEEP LOVE
 「DEEP LOVE」という本があります。携帯サイトから発表した物語が小説化されたもので、既に150万部を突破しています。
 10歳台から20歳台前半の若い女性に、圧倒的に支持されたこの小説は、私達が知らない現代社会の闇の部分と若い世代の精神状態を見事に浮き彫りにしています。
 物語はテンポ良く展開していきますが、いずれの章でもテーマ性は持たせています。そして結構衝撃的な内容です。
 純真な子ども達が今の汚れた社会に出て行く時、自分を汚していく必要に迫られます。社会を知るということは、ある意味自分も汚れないとそこに見を置けないのかも知れません。そこから再び立ち直るのか、そのまま社会に汚れ染まっていくのか人間としての行き方の分かれ道になります。
 社会に染まるほうが生き方としては楽です。心が純粋な人間は、脱け出す過程で悪と横並びの居心地良さの誘惑に悩み苦しみます。汚れた世界から脱した人は、強く他人を思いやり、以前よりも純粋な心を持ちますが、その途中で様々な問題と直視する必要に迫られます。
 生きている目的は何なのか。お金が全ての社会ではないのか。夢だけでは生きていけないのでは。汚れた社会に生きる意味が見出せるのか。など、若い世代が病んでいく社会の問題をテーマにしています。大人でも答えられない問いかけが多いのです。それらを救うのが他人を思いやる深い愛だと作者は結論づけています。
 大人がストーリーにどこまで着いていけるか感性が試される小説です。

 この本を知ったのは、芥川賞の話をしていた時でした。「蛇とピアス」では社会が病んでいる背景から生まれた小説のようだと話すと「もっと凄く現実社会を映し出している本があるよ。若い女性たちの間で流行っていて、皆な読んでいるんじゃないかな」と教えてくれました。
 早速周囲に聞いたのですが、20歳台後半以降の男性、女性は「DEEP LOVE」のことを誰も知りませんでした。試しに若い女性に聞くと知っていました。同じ時代に暮らしていても、やはり文化が違うことが良く分かりました。
 若い方が「DEEP LOVE」を読んだ感想を知らせてくれました。

 本を読んで人生についていっぱい考えさせられ、これからどうありたいか考える契機になっています。信頼している人とたくさん話し、人間が生きている世界を教えて欲しいと思います。白であって欲しいけれど、見方によっては欲を白と思いたい。欲を出しても人間は、最後に欲を出し切った結末を良いと思いたい生き物かなと思います。人間は同じ世界の中でいても生き方とか考え方とか違って、でも生きることを本気で生きたい。
 でも皆それぞれ精一杯生きているんだよ。

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