14.責任をとる
 組織に属している人のプロ的仕事とは、責任を持つことです。会社の仕事と個人の仕事の違いを示すと分かりやすくなります。
 ビジネスの世界では誤りは許されません。しかし、企業の媒体で意見を述べる場合や広告物を作成する場合でも、自分の名前は決して表には出ません。代表取締役になれば別ですが、そうでなければ責任の所在は会社にあります。だから、例え企業の広報誌で主張したことに反論があっても、直接執筆者に苦言は届きませんし、責任をとらされることは少ないのです。

 何故なら、企業の媒体は出稿するまでに何人ものチェックが入りますし、その過程で文章の個性が削られ、企業の求める価値の中で通用する文章となります。作成者の個性は消されます。このため企業が発行する媒体の責任は、発行責任者がとることになります。執筆者よりも発行責任者である役職者に責任の所在があるのです。

 これに対して、個人で仕事をする人は自分の名前を出します。名前で勝負しているから当然のことです。媒体や掲載記事には、これは私の意見であり考え方だと主張が必要です。自分の個性、主張や考えを示さない文章には価値がありません。つまり自分の価値観や考え方を、名前を付して世に評価を問うのが個人としてのプロの仕事です。これは、全ての責任を自分で負うことを意味します。名前を出して考え方を示すのは勇気がいることです。これは体験しないと決して分からない責任の重さです。
 
 どれだけ大変かと言うと、役所や企業に電話をかけても名前を名乗らない所があります。(最近は名乗る所が増えてきていますが。)これは名乗ると責任を持って仕事を遂行しなくてはならないから、ある意味、責任を回避したいとする思いが働くからです。
 自分の名前を出して、自分が関わる会社の一部分だけの責任を担うことでもプレッシャーを感じるのです。これが全て自己責任となる文章を、不特定の方に流すのは勇気のいることなのです。この精神的な負担を持てるか否かが、プロとアマチュアを分けます。

 責任のある仕事は楽しいものです。評価がストレートに自分に返ってくることは、不安もありますが、遣り甲斐もあります。自分の名前がでない仕事は責任がなく楽ですが、遣り甲斐観は雲泥の差があります。名前を前面に出して作品を世に送り出す、あるいは自分の名前で意見を述べることがプロの仕事です。

 組織内の仕事と、個人の仕事のあり方は異なりますが、いずれの立場でも、責任をとれるのがプロと言えます。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ