コラム
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2012/2/27
986    専門外のこと

分からないことを考えていても答えは導けません。数学で言う解を導く方程式を知らないのに数字だけを並べ替えても答えに辿り着けないのと同じ感覚です。大事なことはその分野の人に聞くことです。自分が経験していない、そして全く専門外のことを、どれだけ考えても思っても、本を読んでも、ノウハウ本を参考にしても答えはないのです。

それよりも専門家を訪ねて、分からないことに対する自分の考えを話すことです。きっと悩みは即座に解決に向かう筈です。音楽の話です。多くの人は作曲をしたことがないと思います。ある人のところに音楽作成の依頼が来ました。とても優秀な方なので、依頼者は「この人だったらセンスは良いし、期日までに何とかして良い曲を作ってくれる」と思ったと容易に想像できます。

引き受けたものの作曲の壁にぶち当たりました。依頼された場面に当てはまるイメージは沸くのですが、それが音符にならないのです。困って考え続けてもできないのは当然のことです。

私が電話した時のことです。「今本屋で作曲の本を探しています」という状況でした。「専門外のことを今から本で学ぶよりも作曲ができるミュージシャンを紹介するので、一度会って見ない」と声を掛けました。知らないミュージシャンに会っても価値観が違うかも知れないし、作曲の舞台となるまちを訪れたことがないかも知れません。でもイメージを伝えられたら、一緒にその場所を訪れてみたら、イメージ通りの曲ができるかも知れません。と言うよりも、二人か三人に会ってみて価値観の合う人がいたら、それをピアノで演奏してもらうと良いのです。考えるよりも音に出して耳で確認していく方が、イメージが具体化できるのは確実です。

イメージをピアノで弾いてもらって音にする。それを繰り返すことで描いているものに行き当たる筈です。自分の伝える力とミュージシャンが音符でイメージを表現する力を合わせることで曲は期限内に完成するような気がします。

ダイエットをするためには本を読むよりも運動をする方に効果があるように、曲が必要だったら音に触れる時間を多くすることです。自分のイメージを伝え、もし作詞されたものがあればそれを伝えることで曲は出てくると思います。

仕事は一人でできるものではありません。自分が担当できる範囲は自分で分かりますから、それ以外の部分はその道の専門家に任せましょう。

それにしてもこの人は素晴らしい挑戦をしています。専門外のことを期限付きで引き受けること、その過程で困ったり悩んだりしてそこに辿り着く答えを見つけられると、今の能力をもっと高いところに導いてくれます。その次に作曲の仕事の依頼があったら、もっと簡単にできる筈です。それは一度通った道であり、既に解答の出し方を学んでいるからです。

できないからと思って依頼を断ると、その分野の能力は高まりませんし、この次に依頼はきません。できると思うことが、何かを達成する秘密のような気がします。