コラム
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2012/2/24
985    困難に勝つ

熱い会社があるものです。事務室の壁に掲げられたスローガン「挑戦。やる気、前向き、必ず勝つ」という平成24年の会社方針が掲げられています。毎朝、この目標を見て仕事に取り掛かっていることから従業員全ての人の頭に入っています。

このスローガンは最初「挑戦。やる気。前向き」だったそうです。しかし職場のみんなでもっと熱くなれるスローガンにしたいと思って話し合いが成されました。そして出てきたのが「必ず勝つ」という言葉です。社長はその思いを受け取って、「必ず勝つ」の言葉をスローガンに書き加えました。

社長と従業員が作ったスローガンですから、もう自分達のものになっています。経済的に厳しい中においても家族的経営ができているのは理由があります。

100年に一度の経済危機と呼ばれた時代に遡ります。順調に業績を伸ばしてきたこの会社も100年に一度の経済危機の前に屈した時がありました。毎月の売り上げが1億円あったのに、突然単月の売り上げが800万円に落ち込んだ時がありました。予想していた売り上げがないので取引先への支払いができなくなったのです。社長は「もう駄目だ」と思ったのですが、この危機を脱することができたのは社長と従業員との間にある絆だったのです。

社長は会社からとして全ての従業員さんに生命保険に入っていました。これは万が一の時に家族が路頭に迷わないようにと会社が従業員の皆さんのための保険を掛けていたのです。売り上げが落ちて資金が不足したこの時、従業員全員から社長に提案がありました。「この保険を解約して資金として使ってください」という提案です。社長は「それは皆さんのものですから私が使うことはできません」と答えたのですが、それでは従業員の皆さんは納得しませんでした。「会社の危機に使うのは当然のことです」という熱い気持ちに社長は感謝しながら生命保険を解約し、そのお金で遅れることなく取引先への支払いをすることができたのです。

結果的に売り上げが落ち込んだのはその一ヶ月だけでした。それは会社の危機を感じ取った従業員の皆さんが営業に、そして工場で必死に働き、売り上げを元に戻したのです。

その気持ちは、家族のように思ってくれている社長のために、会社を潰してはいけないという思いでした。社長は危機を迎えても雇用調整は行いませんでした。そして人件費を削ることは最後の選択の中でと思っていました。自らの給与を削りコスト削減を徹底して会社を持ち直したのです。

それから毎年、一年に一度その年に目指すべきスローガンを掲げています。社長と従業員の合作が事務所に掲げられているのですから、やる気になります。

「あの時の困難を乗り越えられた経験があります。今の困難にも打ち勝てると信じて挑戦しています。この時期の設備投資は決断がいりましたが、前向きに考えています。銀行が無担保で数億円の融資をしてくれるのは大丈夫だという証拠なので、今やらなければやれる時はない」と社長は話してくれました。時期は待ってくれませんし、だからと言って準備期間を設けてくれません。チャンスは突然に訪れて早期の決断が求められるものです。