コラム
コラム
2023/7/12
1893    Best That You Can Do

懐かしい歌声が響いてきました。YouTubeを聴いていると「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」が出てきました。1980年代を代表する「懐かしい」ウエストコーストです。

日本のタイトルは「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」です。確か映画「ミスター・アーサー」のテーマソングで、映画そのものの評価は高くありませんでしたが、この澄んだ歌声は印象深く、わが国でもヒットしたように思います。

思い出に残っているのは、米国研修も終わりの時を迎えようとしていた日のことです。研修に参加していた前田さんと米原さんと一緒にニューヨークのホテルのバーに行き、グラスを揺らしながらピアノ演奏を聴いていました。

何曲か聴きながら飲んでいたのですが、奏者から「リクエストはないですか」の問いがあったように思います。そこでクリストファー・クロスの「Best That You Can Do」をリクエストしたのです。演者は少し戸惑いながらも演奏を承諾してくれたのです。戸惑う理由は簡単で「声がとても高くて声が出ないかも」と思ったからだったのです。

ピアノを弾きながら歌ってくれました。声が高くなるサビの部分ではかすれましたが、歌ってくれたのです。

少し酔いながらも、別れを告げようとしているニューヨークの最後の夜に聴いた「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」を忘れることはありません。

飲み終えた後の三人の乾杯の場面は映画の名シーンのように覚えています。人の心の中は分からないけれど、このときの三人の気持ちは間違いなく「もっとここにいたいよな」「明日も今日までの日が続くように思っている」でした。

そんなことを思い出しながら「Best That You Can Do」を聴きました。1980年代のニューヨークの思い出です。

続いても懐かしい映画「ロッキー」で王者アポロとの試合に挑むためのトレーニングシーンがでてきました。ランニングするロッキーと共にフィラデルフィアの朝の光景が画面を走ります。この試合に全てを賭けたロッキーの気概がこめられた名シーンです。

この映画に出会ったのは17歳の時でした。低予算のマイナーな映画がアカデミー賞を獲得するアメリカンドリームだったのです。映画「ロッキー」に夢中になりました。

現実は厳しいけれど、負けることは避けたいけれど、挑戦することが素晴らしいことだと教えてくれたのです。負けることは恥ずかしいと思いがちですが、それよりも挑戦しないことの方が咎められるべきことです。挑戦するために必要な孤独なトレーニング。挑戦している人は誰もが、人知れずに心身のトレーニングをしています。耐えてきた人だけが挑戦する権利を得られるのです。「ロッキー」はそれを教えてくれますし、人生は挑戦するためのトレーニングに耐え抜いた人が果実を得られるのです。

得られる果実は勝利だとは限りません。負けることも悔しい結果になることもあります。

悔し涙を流すこともありますが、今わかることは、それは挑戦した人だけに与えられる勲章だと思うのです。

若い頃に観た映画「ロッキー」は、私達に人生の多くのことを教えてくれる教材だったのです。今もトレーニングの場面を観ると純粋に感動しますから、僕にとっては宝箱のような映画です。令和5年夏、YouTubeを聴いてしばし思い出が蘇りました。