コラム
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2023/7/11
1892    映画の話

親しくさせてもらっている映画監督との話です。

「映画『ラストサムライ』がヒットした理由は日本人の『恥と潔さ』を表現していたからです。想像できる武士道の全てが込められた作品だと思います。日本人の精神的価値は武士道にあると考えていますが、アメリカ映画でよく表現してくれたと思っています。

主人公は私心を排して物事を判断している、と言うよりも善悪ではなく神の側について判断しているように思います。

私は日本映画の最高峰は『七人の侍』だと思いますが、ここでは『この侍ならもっとも神に近い人だ』と思わせるカメラワークをしている場面があります。このしぐさが外国人にも理解されているのです。本来は判断の質の高さや速さが日本人の凄さであり、精神的価値はその人の地位の肩書も全く入る余地はありません。日本人の精神価値の凄さを世界に発信する映画を創りたいと思います。日本人が何者であるかを知ってもらうことで、再び世界で評価される国になると思います」と話してくれました。

映画だけではなく絵画や音楽などの作品で、監督や作者が表現していることは解説が必要です。残念なことに、高い理想を理解してもらうには発信者からの解説が必要なのです。

熊野古道や世界遺産の価値は一人でその場を訪ねても理解できません。絵画も鑑賞するだけでは何を表現しているのか理解が難しいのです。

しかし語り部さんやガイドさんに現地を案内してもらうと理解が深まります。絵画も解説してもらうと作者が何を伝えたかったのかを理解できます。志や熱意、作品などを他人に理解してもらうためには解説することが命であり、解説なしに理解はないと思うべきです。人に何かを理解してもらうためには、丁寧に分かり易い説明が必要だということです。

芸術家との話は奥が深いので普段考えないようなモノの見方の勉強になります。映画は監督とスタッフの創造力の集大成であり、作品には大いなるメッセージが詰め込まれているのです。芸術家ではない私達が作品を理解するためには解説してもらう必要があります。

映画解説者の書いた作品紹介を読むことや映画の原作を読むのは、作品を理解するためです。社会は単純に生きるべきですが、人が創りだしたものには単純なものはないと思います。映画監督の創造力、芸術家の作品、そして政治家の言葉もそうだと思います。まして文章で書かれたことだけでは、議員がその言葉に込めた志や思いは、言葉で説明しなければ分からないこともあると思います。

監督が解説する作品を理解するためには、その映画を観ておかなければならないけれど、芸術家の世界と感性は独特のものがあり、少しでもそこに触れられる経験は得難いことです。

日本人のビジネスや政策などには志、そして心が必要だと思っています。無機質な表現の中に、少しだけでも自分の思いや感性の言葉を入れて、他とは違うと思わせなければなりません。芸術に触れることは仕事の質を高めることに他なりません。映画、音楽、絵画、ミュージカルなど機会があれば、鑑賞すること、解説を聞いて理解を深めることで仕事も生活もその質を高めることができます。

監督から解説してもらった「ラストサムライ」「七人の侍」を観たくなっています。