コラム
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2023/7/10
1891    組織の話

ある時、元組織のトップが組織に対して「ところで今回、役員会で決定した内容を教えてくれませんか」と組織の三役に依頼したところ「そのことは既に現場の役員に伝えていますよ。聞いていませんか」との返答があったそうです。

またある時、組織の三役に対して「皆さんから相談を受けたので少しでもお役に立ちたいと思います。宣伝用のLINEスタンプがあると聞いたのですが、私のLINEに送ってくれませんか」と依頼したところ「依頼のスタンプは以前に役員に送っていますよ。もらっていませんか」と返答がありました。

二つの事例を聞いて僕は「そんなことあるのですか」と笑ってしまいました。相手の方も「こんなことがあるのですよ」と穏やかに返事をくれました。

どちらもダメな組織の研修事例になるようなことです。

お気づきの通り。この問題は次の通りです。

  1. 先輩から依頼を受けているのだから、仮に役員に伝えていたとしても出せる内容は伝えるべきです。現場の役員に伝えている内容であれば内部の人に対して出せる内容だと思いますし、その場でお答えすることはできるはずです。
  2. これまで先輩には組織として指導をいただいたり、お願いに対して協力してもらったりしている関係です。依頼はするけれど依頼には対応しないのは役員として如何なものかと思います。
  3. 現場の役員に伝えているとしても、伝えるべき対象の組織の先輩に伝わっていないのであれば勘を働かせる必要があります。現場から必要な人に情報が届いていないことが問題だと感じるべきですし、自分がその結果のフォローしていなかったことを反省すべきです。
  4. 三役と現場役員の意思疎通が図れていないのではないか。三役が意図することが現場では十分に理解されていないのではないか。現場から三役に対して質問しにくい雰囲気があるのではないか。組織を統括している人は感じなければなりません。
  5. LINEスタンプなら依頼を受けた後に直ぐに対応できます。現場に送っていても、そうでなかったとしても即時対応が可能な依頼です。その勘が働かなかったことが問題です。

以上の問題点を指摘しますが、考えるならまだまだ組織としての問題点はあるはずです。

このように自分では分からないことは多々あります。相談して物事を進められる人が傍いることや、依頼した結果をフォローする意識を持っておく必要があります。何よりも経験のある元トップから依頼があり不具合を感じたなら「教えを乞う」ことも必要です。それは恥ずかしいことでもなければ、能力がないと思われることでもありません。聞くことは学ぶことですから、先輩のやり方、考え方を聞いて現代流にアレンジすることは大切です。

過去の時代の経験は役立たないものばかりではなく、今に生かせることはたくさんあります。特に人間関係は昔も今も同じような悩みがあり、先輩に相談することなどでそれを解決していると思います。経験値は役立たない過去の遺物ではなくて、これからに生かせる財産になると考えるべきです。

AIの時代ですが、蓄積、分析されたデータに人の言葉を付け加えることで、この次の行動が見えるかもしれません。直面した課題に対しては、言葉に込められた心の方向に向かうように思います。データを土台にしてその上に言葉がある。そんな感覚で問題を考えたいものです。

データだけで解決方針を考えるならAIに勝てません。言葉を付け加えることでAIと違う人間らしい心のある解決方針が見つかるかもしれません。