コラム
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2022/2/14
1869    クワッドアクセル(4回転半)

北京オリンピックの男子フィギアスケート、羽生結弦選手のフリーの演技に感動しました。

感動の言葉はたくさん伝えられています。その中の一つの記事もまた感動を増やしてくれるものです。それは中国メディア「光明ネット」における中国国営放送「CCTV」の解説者である陳宝如氏の語りです。陳宝如氏は故事を交えて羽生結弦選手のことを次のように語ったと伝えられています。

「守ることなどかなわない城を守り、勝つことのない戦(いくさ)を戦う。自分のうちの全ての栄誉、全ての輝きを歴史の車輪の下に横たえて毅然と立つ。ショートプログラムで敗北して1位に18点の遅れをとっても、彼は笑いながら取材を受け『氷に嫌われちゃったのかな』と言った。この飄々とした姿もまた王者の風格と言っていいだろう。天の意は測りがたく、頂にたどりつくことができなかったとしても。あなたが成し遂げたことはどれも歴史に記されるのだから、成敗(成功、失敗)など問題ではない」

クワッドアクセル(4回転半)に挑戦した羽生選手の選択は「凄い」としか表現できないもので、不安も恐れも克服した精神力と「今やれることをやる」覚悟に感動しました。恐れていては今やることを躊躇するものですが、練習でも成功したことのないクワッドアクセルをオリンピックのフリーの演技で挑戦するのですから、その精神力はもう神の領域です。

競技者にとって金メダルを獲得することは最大の目標だと思いますが、羽生選手は結果よりも可能性がある限り挑戦することを選択したようです。フリーで安定した演技を行っての表彰台の可能性を捨ててまでも、挑戦する道を選んだことに感動です。多くの人がクワッドアクセルの瞬間を待ち望み、成功を願ったはずです。

固唾をのんで見守った中、惜しくも成功はなりませんでしたが、挑戦したことは記録に残されました。後に続く選手のために挑戦する目標を前に持って行ったのです。いつか誰かがクワッドアクセルを成功させるときが訪れると思いますが、羽生選手が挑んだ北京オリンピックが人類の歴史の原点になるのです。

勝者も美しかったけれど羽生選手も、また美しい姿でした。こんな素晴らしい演技を魅せてくれた羽生選手に拍手を送りたいのです。フリーの演技を通じて、挑戦する限り可能性は閉ざされないこと。そして期待を背負って挑戦することは尊いことだと教えてくれました。

オリンピック三連覇よりも「クワッドアクセル」の成功を目指した羽生結弦選手のオリンピックは終わりましたが、いつまでも私達の心に残る演技を魅せてくれました。そして涙を堪えてインタビューに応じている羽生選手の気持ちを感じられたことを嬉しく思っています。頑張ったけれど結果がでないことは本当に悔しいことです。言葉にならないぐらいに悔しいことは、困難に挑戦した人なら理解できる感情です。

それにしてもショートプログラムを終えてからフリーまでの間、羽生選手と同じように不安を感じ、絶対にできると思って応援した人がどれだけいたことでしょうか。僕もその一人で、安全策で表彰台に立って欲しいと思う気持ちと、人類初の4Aに挑戦して成功させて欲しいと思う気持ちが半々でした。結果よりも挑戦に価値をおいた羽生選手を心から称えたいと思います。

こんな素敵な時間を体験させてくれたことに感謝しています。