コラム
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2021/10/11
1859    宇宙教育

平成23年産経新聞の夕刊で連載されていたのが「宇宙をめざす和歌山①〜⑪」です。いち早く「宇宙と和歌山県」に注目、記事にしてくれました。今読んでみると、この時のコメントが凄いのです。

  • 和歌山県教育委員会山口教育長「ダイヤモンドの試金石」
  • 県教育委員会担当者「いずれは和歌山から宇宙飛行士を」

まさに和歌山県か宇宙に近い県であることを信じてのコメントです。教育長を始めとする職員さんに本気で宇宙を語ってもらえていることは、関わっている人の熱意の賜物だと思います。そうでなければ産経新聞が記事にしてくれませんし、教育委員会が和歌山県と宇宙に関する発言をすることはありません。僕が認識しているのは、和歌山大学観光学部とシステム工学部、そしてJAXAが主導し、趣旨に賛同した和歌山県教育委員会がリーダーシップを発揮して「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」を結成したということです。価値があるのは「JAXA」の冠が付けられていることで、知っている人は分かることですが「JAXA」の名称は簡単に使うことは許されていません。

勿論、「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」を誕生させるのは簡単なことではなくて、JAXAと政府まで巻き込んだ「しかけ」があったのです。社会でゼロから何かを生み出すことに簡単なことはないのです。今も表面化していない関係者の努力によって、和歌山県の教師たちが筑波スペースセンターでの研修に参加することができたのです。

「和歌山県と宇宙」を理解して教師を送り出す決断をしてくれた山口教育長には、今も感謝していますし、同スペースセンターの研修の受け入れに尽力してくれた上野精一さんにも深く感謝しています。

そして縦横無尽の活躍をしてくれたのが、和歌山大学観光学部の上野敦子特任教授(当時)でした。この人と人をつなぐ推進力があったからこそ「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」が誕生したのです。その行動力は留まりません。ボーイング社の広報部長を和歌山県庁に案内してくれて「教師をNASAのスペースキャンプに参加させる」計画を協議したのです。

特筆すべきことは「教師のためのNASAスペースキャンプ」の参加資格は理系の教師が対象でしたが、「宇宙教育を実践するために文系の先生を派遣したい」という我々側からの仰天提案に対して、当初は「NO」の姿勢だった広報部長も「検討する」から「試してみる」と態度が変化していきました。

そして「抜き打ちで職場に電話をするのでその結果で判断する」ことになりました。後日、和歌山県教育委員会に一本の電話が鳴りました。電話に出たT先生は受話器を取ると「英語で話しかけてきた」ことを知りました。慌てることなく流暢な英語で会話を始めたのです。そう「試してみる」と回答したのは「対象として推薦した教師の英語力と咄嗟の時の判断力」だったのです。ボーイング社のテストに見事クリアしたT先生は平成22年の夏休みにオーランドでのNASAの研修に参加することになったのです。

文系の教師に「宇宙教育」の授業に対応してもらうことを考えたのは「宇宙は理系だけのものではなく音楽や芸術、国語にも取り行けることが出来る」からでした。T先生は見事に「宇宙教育」を実践してくれることになり、その後も継続して活躍してくれています。

あれから10年が経過しています。和歌山県の教育界で「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」の教師が活躍してくれていることは「宇宙教育」を唱えたファウンダーの皆さんの誇りであり、彼らの活躍を語れることがとても嬉しいのです。

そして僕も、当時、関わった一人として「宇宙教育先駆者」としての元JAXAの上野精一さんのことを語る時が来ていることを認識しています。平成の時代に「宇宙教育」の基礎を創り上げ、令和の時代に継続していることの先駆者としての誇りを語っています。