コラム
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2021/10/6
1857    見通す力

議会では当局から当初予算案や補正予算案が提案されます。地方自治体は単年度会計なので、毎年2月議会で当初予算案の審議を行い、他の議会では補正予算案を審議しています。短期的な政策に必要な予算を審議して公共投資などに使っています。議員の役割として、予算案の審議を尽くして本会議で可決することは重要なことです。

ところが2年先、3年先、5年先の政策と予算についての補正予算案が提案されることはないので、議員は一般質問で政策提言を行うことになります。2年先以降の政策に関しては議会で提案する以外にないのです。ですから一般質問を行っている議員は、本年度だけではなく中期的に県政が発展するような政策提言をしていることになります。一般質問の大きな意味はここにあります。当局から提案された予算案を審議して、可決しているだけでは積極的な政策審議をしているとは言えないのです。

しかし地方自治体の予算は政府から配分されるものが大半であり、政策実現に向かわせるだけの自主財源は潤沢ではありません。

コロナ禍の影響により2年先から始まる有利子負債の返済によって企業が痛むので、地域経済が落ち込むことや景気後退局面に突入することを予測して、県内経済を支える政策を考える必要があります。県内経済は予算内の公共投資で維持できない事態を想定して、議員として令和3年度の今から経済対策を考えるべきです。

予算の積み上げは陳情という形の受動的な動きなので、国全体が不景気に落ち込んだ時に有効とは言えません。再び大幅な金融緩和をしなければ、国にも地方にも配分するお金がないからです。国の経済を痛めることを分かっていて、受動的な取り組みをすることは良いとは思えません。

それよりも県内に民間事業者からの投資を呼び込むことを考えるべきです。民間事業者に投資を促すための提案をする。または一緒に事業計画を策定することで投資を呼び込むことが可能となるのです。考えられることとして、大規模な企業誘致やカーボンニュートラルへの取り組みなどがあります。

わが国においてこれまでは、企業の資金調達は間接金融が主流でした。金融機関からお金を借りて投資してきましたが、現代、そして世界は直接金融、米国などではシリーズによる投資が主流になっています。

つまり企業は事業計画を策定してそれを実行に移す時に資金調達を行うことになります。大規模な事業計画の場合、自己資金で必要な資金を調達できることはありませんから、事業計画に基づいて投資を募ることになります。事業を進めるためには資金調達が必要なことは余りにも当たり前のことです。大きな投資、例えば数千億円の事業資金が必要な場合、事業計画を示して投資を募ることになります。事業家が資金調達を行うことは当然のことであり、県内に企業進出してくれる、つまり投資してくれるものであれば大歓迎です。

公共投資が限られている中、地域経済を守るために民間投資を呼び込むことも議員として考えるべき政策です。不景気が予測できている令和3年度です。議員は数年先に備えて議案に賛成するだけではなく、民間投資を呼び込むための行動を行うことが必要です。今仕込んでおかなければ、経済不安に直面した時に慌てても何もできません。そんな時、決め台詞である「想定外でした」と発言することになります。そうしないためにも今から民間投資を促し、可能な政策を進めるべきです。やらなければ地域の衰退が待っているだけです。

日本全体が不景気で右往左往している時を想定して、「和歌山県は民間事業が進んでいるので慌てることはない」ことを目指しているのです。事業の動いている姿が見え始めるのは、構想から2年先以降のことです。令和3年度に考えている政策が動き始めるのは、令和5年度ぐらいなります。令和5年度になって考えても遅いですし、実効性のある経済対策は何もできません。

現在から将来を見通す力、そして決断に必要な胆力、信頼して前に進める推進力、そして民間事業者の投資を呼び込む地域力を示す必要があります。それができる人や議員がいれば、将来、発展の道を辿ることになります。疑念や不安を感じて今行動を起こさないことは、全国と同じように不景気の波に沈むことになります。近い将来の経済を見通せているのにやらなかった場合、それは行政であり政治の責任です。そうしないために覚悟を持って動いているのです。