コラム
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2021/7/26
1812    ランニングフォーエバー

森田健作さんが主演し和歌山県を舞台とした映画が「ランニングフォーエバー」です。撮影は1991年で和歌山県内の観光地を中心に撮影されました。今年は2021年ですからあれから30年が経過しています。この映画は和歌山県青年団体連絡協議会が地域振興のために、映画会社や俳優さんに呼び掛けたものです。主演に青春スターの森田健作さんを依頼して、和歌山県振興のきっかけにすることを目指したと記憶しています。

当時、この映画のことを和歌山県青年団体連絡協議会から聞いたので、会社の広報誌に掲載するために取材に行ったのです。取材は日曜日で紀三井寺競技場のゲート付近でした。確か主役の高校チームが駅伝大会に出場し、チームのタスキを受けた最終ランナーがゴールに向かうシーンの撮影が行われていました。

森田健作さんへのインタビューを終えた後、「撮影現場を見ていきますか」とお誘いを受けたので、紀三井寺競技場の控室からゴールシーンの撮影現場に行ったのです。高校生ランナー役の男優がゴール直前に足を負傷したので走れなくなりました。しかしチームから受け継いだタスキを持ってゴールしなければならないので、道路に倒れたのですが負傷した足を抑えながら懸命にゴールを目指します。

沿道からチームメイトからの「頑張れ」の声援が響く中、ゴールを見据えている場面をカメラが追います。そこで一時カットとなりました。ゴールのテープを持つ役の人がいなかったのです。撮影を見学していた上司のFさんと僕に映画監督が声をかけてきました。「ゴールテープを持ってくれませんか」と。

依頼されたので二人がその役を引き受けました。映画監督からのアドバイスは「ゴールを目指している高校生に『頑張れ』という気持ちを持って、温かくて励ますような目で見つめてください」というものでした。その間にスタッフが高校生ランナー役の男子に霧吹きで額に水を吹き付けていました。これで汗をかきながらゴールを目指すシーンの撮影準備ができました。

負傷した足を抑えて引き摺りながらゴールを目指すランナーを、ゴールテープを二人で持ちながら見つめました。勿論、ランナーを温かく励ますような視線で見つめました。数分間、無事、ゴールシーンの撮影が終わりました。俳優もスタッフも、そして現場の空気も安堵感に包まれました。

後日、映画のゴールシーンのビデオを見せてもらいました。グリーンのウェアを着たFさんと僕がそこに映っていました。見つめるシーンは撮り直しがなく一回だったので「大丈夫かな」と思っていましたが、うまく映画のワンシーンになっていました。ランナーを優しく見つめているシーンと表情のアップのシーンが収められていました。
あれから30年経過しました。和歌山県青年団体連絡協議会の思いは、1991年以降、将来の和歌山県の発展した姿でした。その時のメンバーは、30年後の和歌山県の将来を考えて構想を描いていました。その時の構想と2021年の姿が合致しているのか。その時描いた将来と違いがあるのか。「それを検証してみると面白い」と言っていました。将来を描いた当時の青年、現在50歳代の人達の思いが熱く伝わってきました。将来を描いた青年たちの思いが詰まったこの映画をもう一度、観たくなってきました。