コラム
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2021/7/21
1811    Fプロジェクト

Fプロジェクトはチャリティコンサートを通じて、恵まれない子ども達の支援や被災地の支援などを行っています。主なコンサートは鷺森別院岡崎支坊での春と秋のチャリティコンサート。アマレットでの親しみのあるコンサート。そしてクリスマスコンサートです。

そしてコンサートのタイトルをいつも楽しみにしています。同プロジェクトはテーマを持ったコンサートに仕上げているので、毎回テーマを議論してそのテーマを大切にしていると思います。

和歌山市内でコロナ禍が収まってきた時に開催したアマレットのコンサートで感じたことがあります。それは演奏を聴いたお客さんに元気を与えるのではなく、お客さんが元来持っている元気を引き出していることです。コロナ禍で心の奥に沈んでいる「元気の源」を音楽の力によって心の中心位置に引き出しているのです。ですからグループの技術や歌声を聴かせるだけの演奏ではなくて、楽しく賑やかになってもらえる演奏をしていることに気づいたのです。

まずは演奏を聴いてもらって心をほぐす。ほぐさなければ「元気の源」を引っ張り出すことはできないからです。心身がほぐれてきたところで、お客さんが一緒に歌える曲となるように選曲しています。「さあ、歌いましょう」の感覚の言葉でお客さんの表情を和らげていきます。

そして一緒に歌うことから始まって、会場のお客さんを舞台に引っ張り出してしまうのです。人は受動的な学習や体験はなかなか身につきません。能動的な体験こそ心身の奥まで届く効果を与えるのです。準備をしていない中、うまくリードされて突然、舞台で歌う体験は非日常体験ですから今を変えるために効果的なものです。

戸惑いながらも舞台で歌うお客さんの表情は真剣であり、そこから笑顔へと変わっていきます。日常の中で自ら真剣さを出すことは難しいことです。真剣になるためには、真剣にならざるを得ない場面に引っ張り出してもらうことが必要です。人前で歌うことは真剣さを伴うことなので、これは非日常体験です。

Fプロジェクトのリーダーは「多くの人は実は歌うことが好きなんですよ。歌うことでストレスは発散しますし、笑顔になるでしょう」と話してくれましたが、全くその通りだと思います。歌は食べ物に例えると主食ではないけれど、身体を構成するのに必要な栄養素です。

コロナ禍にあって外出の機会や人と会う機会は減少しています。そしてカラオケなどを歌う機会も減少していると思います。Fプロジェクトのコンサートはピアノ、ベース、ドラムなどのバンドですから、歌う時の心地よさが違います。バンドで歌う体験は勿論、非日常ですから心身に与える影響が大きいのです。
司会を担当する方は「この歌はこの人が歌えば似合うだろう」と見抜いて舞台に引っ張り出します。コンサートで予定している演奏曲を聴くだけではなくて、一緒に参加するような環境にしてくれます。だから人に元気を与えるコンサートではなくて、人が持っている「元気」を引っ張り出すコンサートなのです。

令和3年はFプロジェクトとしての活動を再開させていますから、和歌山市に元気な要素を増やしてくれると思います。