コラム
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2021/6/23
1792    第17回孫市まつり

コロナ禍にあって多くのイベントが中止、延期になっています。お客さんを集めるイベントは「密」状態になることから、和歌山県内でも中止にしている企画が多いのです。

和歌山市内で開催されている「孫市まつり」もそのひとつで、令和2年は中止、令和3年も「中止やむなし」という事態でした。孫市の会では協議を重ね「何とか2年連続の中止はやめたい。孫市の魂を引き継げなくなるから」という思いからでした。しかしお客さんに来てもらうイベントは無理なので方法を考えました。

その方法が動画を撮影して配信するというものでした。会の役員が和歌山県に相談に行ったところ「県は文化事業としてイベントに対して支援しています。イベントを中止して動画撮影をする費用の支援はできません」という回答でした。県は応募された事業計画は文化事業審査会を通すので「中止は仕方ないですね。動画撮影の費用負担をしましょう」とは言えないわけです。

「孫市の会」の役員会に招かれてこの相談を受けたので意見を伝えました。

「孫市まつりを中止にするのではなくて縮小開催にしましょう。お客さんには来てもらわないこと。お店の出店は中止すること。武者行進は関係者だけで実施すること。演劇と孫市コンサートは実施しましょう。太秦の映画村からプロの映画監督に来て撮影してもらうことは良いでしょう。Youtubeで配信するのであればプロの撮影が必要です。

縮小して無観客で開催したものを動画撮影して配信することは文化事業として意味があるものです。和歌山市の偉人を全国に発信できること。場合によっては(ハリウッド映画に出演したリー村山さんも出演してくれるなら)世界にも孫市が伝わります。

県に対しては例年開催しているこの文化事業をコロナ禍のため縮小して開催しますが、Youtubeで配信することによって和歌山市内だけのイベントではなくて、全国に発信できるイベントに仕上げる企画を訴えましょう」と答えました。

そこで要望書を作成して県に説明に行きました。文化事業であることとプロの映画監督が撮影して情報発信してくれることから、効果が期待できることで動画撮影の要望を聞き入れてくれたのです。

そこで3月末に規模を縮小して「第17回孫市まつり」を開催しました。当日は応援に駆け付けたのですが、声を出せない、物音を立てられないような真剣な演技とプロが撮影している緊迫した雰囲気が感じられました。

そして動画編集が完成してYoutubeで「孫市まつり」を配信することが出来ました。これは記録として後々までも残るものですし、紀州の英雄ですが戦国時代の武将と比較して名前が挙がらない雑賀孫市の名を全国に知らせることにつながったと思います。

和歌山県の偉人たちは、その功績と比較して全国的には無名な方が多いのですが、雑賀孫市もその一人だと思います。

そして副次的な効果が生まれました。産経新聞の令和3年6月11日の夕刊一面と6月20日の朝刊和歌山版に記事が掲載されたのです。新聞に二度も記事が掲載されたことは大きな成果です。もし中止していたら、動画配信とそれを取り上げた新聞掲載はありませんでした。

コロナ禍において知恵を絞って無観客で実施した結果、お客さんに来てもらって開催している例年と同等の効果がありました。これは知恵と企画力、行動力と人脈があれば、思った通りにできなくても成果があった事例です。「第17回孫市まつり」は民間が主体となり和歌山県が支援した文化事業ですが、コロナ禍の中で新しい形の成果を発信できた事業となりました。違うことをやれば新聞も記事にしてくれるものなので、新しい社会では新しい発想で企画したいものです。「第17回孫市まつり」の企画はその指標になるものです。