コラム
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2018/9/28
1727    雑談力

雑談の力について、先日、和歌山市で講演をしてくれた茂木健一郎さんからの話です。

AIが進化している現代、多くの分野で人間はAIに勝てなくなっているようです。チェスや将棋、囲碁などでは名人級の棋士が負けるケースも珍しくなくなっています。茂木先生は「もう数年もすればほとんどの分野で人間はAIに勝てなくなると思います。勿論、現在でもそうですが。しかし一つだけ人間が勝っていることがありますし、将来もこの点に関しては人間が勝つと思います」と話してくれました。

人間がAIに勝てるのは「雑談」だということです。人間は雑談ができますが、AIは雑談ができません。雑談は無駄、無意味のように思いますが、人間にとってとても重要なことだということです。それはコミュニケーションを図れること、企画のヒントやアイデアが得られること、信頼関係を築けることなど、人として必要なことをもたらしてくれます。

ビジネスの場合であっても、いきなり商談から切り出すよりも、雑談から始める方がリラックスできるのでスムーズに話が進むことがあります。必要な用件だけを話題とするような交渉は上手く進まないように思います。

本題が10の比率だとすれば、雑談は90ぐらいの比率を占めていても良いと思います。100のうち10を本題に時間を割き、多くの部分を雑談で会話をする。それが良好な人間関係を築くことにつながるのです。つまり雑談のない関係は信頼関係を築けていないということです。

AIが雑談する場面は想像できません。AI同士が本題の会話をすることなく雑談をしている場面は現段階ではあり得ないことですし、将来も可能性は低いことだそうです。雑談がコミュニケーションを図る手段だとすればAIにとって不必要なものです。AIが雑談することによってお互いにコミュニケーションを図ろうとすることはないからです。

人間だけが雑談を交わすことができ、それはコミュニケーションを図る手段として、また企画やアイデアのヒントになることなどの効果につながっています。

人間にとって将来とも雑談は社会で生きるための必要な手段で、雑談力を持つ人が進化したAIの時代においても生き抜くことができるようです。雑談を馬鹿にすることはできませんし、雑談ができる人が他人とのコミュニケーションを取れる人だとも言えそうです。

本題は5分で終わるものであったとしても、それを含めて1時間、会話を交わせる人同士である必要があります。出会って5分で要件を終え、「じゃまた」と別れてしまうようでは、次のビジネスの機会は訪れません。雑談ができる関係であることが、次につながる人間関係なのです。

古い体質の会社や組織では「雑談ばかりしていないで」という指導や文化がありますが、それは正しいこととは言えません。雑談を交わせる職場であることが将来性のある会社であり組織だと言えそうです。「雑談は大いに歓迎」と思い、上司や部下とも雑談できる人でありたいものです。

人間がAIに勝てること、それは雑談だと聞いて楽しくなりました。雑談力が人間力を高めるために影響を与える要素のようです。

雑談力を疎かにしないようしたいものです。