コラム
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2014/10/27
1547    夏から秋へ

平成26年8月31日は夏の終わりの一日です。夏休みが終わり、また9月1日は月曜日なので仕事が始まる日となります。平成26年の夏は、この夏が愛しいと思える夏でした。

和歌山市内の病室。目を閉じて話をすることそのものが面倒臭そうにしています。身体を横にして寝るばかり。昨日は発熱したことから辛そうだったのですが、今日は熱が下がっているので、本人の言葉を借りると、「昨日と比べると今日は極楽だ」そうです。

昨日は弟がお見舞いに来たので、父は喜んでたくさんの話をしていたそうです。ただ、弟が帰った後に「もう一度会えるのだろうか」という言葉を残したと聞きました。時間が限られたものであることを悟る言葉です。

今日は疲れているようで言葉数が少なくて、ただ横になっているだけでした。

今日で閉店する高島屋和歌山店の話をしていると、父は「繁栄する時もあれば衰退する時もある」と語ってくれました。これが高島屋を意味しているのか、人生の歩く道のりのことを意味しているのか分かりませんが、生きていると繁栄の時も後退の時も訪れます。繁栄の時は謙虚に、後退の時は我慢をすることが大事です。勝って奢らず負けても腐らず。子どもの頃にそんなことを教えてもらったような気がします。もしかしたら命が尽きる前に人生訓を残してくれたのかも知れません。

付き添い続けている母親は「8月15日に入院した時よりも、ずっと痩せている。顔の頬はげっそりしてきました」と話してくれましたが、確かに入院2週間で身体が細くなってきました。余り食べていないので身体に栄養が届かずに痩せてきたように思います。

午後6時になると夕食が運ばれてきました。喉に詰まらせるといけないのでご飯もおかずも全て流動食です。食べ物としての歯ごたえや味がないように感じる食事です。誤飲すると大変なことになるのでやむを得ないことですが、食事が味気ないのが可愛そうです。

少しおかずを残したので「食べなければ」と話したところ、「(流動食は)おいしいことなんかない」と話してくれました。やはりおいしいものを食べたいと思います。食べたいものが食べられない辛さを感じる言葉でした。

食べ終えると座った状態にあると身体が辛いようで、「ベッドを倒して」と言うので、少しだけ横にしました。ベッドを水平にしてしまうと、いま食べたものが喉に詰まったり、戻してしまうような気がしたからです。ベッドを少しだけ横に倒して、時間を置いて水平に倒しました。

自分で出来ることが徐々になくなっていく。そんな状態になってきました。立つことも座ることも自分で出来ないことをどう感じているのだろうかと思うと、悲しい気持ちになります。「誰でも一度は通る道を、果たして父は通ろうとしているのだろうか。ただ、今年の夏を通過してくれたことは幸せなこと」だと思いました。

お陰さまで平成26年の夏は楽しい季節で終えることが出来ました。これから季節は秋に移ります。平成26年の秋という季節は、一体どんな舞台を用意してくれているのだろうかと思います。できることなら、このままの幸せな状態が続きますように。夏の終わりにそう願っています。

人生にも季節があるのなら、今はまだ秋です。実りと収穫の秋を迎えたいものです。