コラム
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2014/10/22
1546    カウントダウン

平成26年8月16日、主治医から血液検査やCTなどの診断結果を聞かせてもらいました。

予想はしていたものの厳しい状態にあることが告げられました。肝臓の癌が大きくなっていて、それが原因で肺に水が溜まり、胃にも水が溜まり発熱しているということです。83歳ですから体力的に治療は不可能で、点滴で栄養を補給し続けることだけが命を維持するためにできることです。「水が溜まって食べられないいので栄養分は点滴で投与することになります。但し、点滴といってもエネルギーは400キロカロリー程度なので身体を維持するには厳しいと思います」ということでした。

続けて「点滴を続けますが手や足を始めとして身体全体が水で浮腫みがでています。浮腫みがこれ以上ひどくなると点滴もできなくなります。その時は栄養補給をすることができなくなりますから、喉が乾いたら口から水分を補給するなどしか、治療とはいえませんが方法はなくなります」と厳しい現実を伝えてくれました。つまり治療することはできなくて、良くて現状維持、時間の経過と共に悪くなるばかりで助かる見込みはないということです。

「栄養価の高い点滴というものがあります。これは針が太いので足から針を20cm位入れることになります。一度入れると外すことはできません。この点滴で栄養を送り続けることはできますが良くなる訳ではありません。延命するだけのことになります。ただ肝臓に癌細胞があるので、点滴の栄養は食事で栄養を摂取する場合と違って、血管を通り直接肝臓に入ります。ですから肝臓の処理能力の問題が生じ、癌細胞が大きくなっていることから肝臓が先に悲鳴をあげるかも知れません」ということです。

通常の点滴ができなくなった場合に備えて、この点滴を行うかどうかは家族の選択となります。時間にして「一ヶ月単位」の命だと伝えられましたから、本音は一日でも長く生きていて欲しいということだけです。しかし治る見込みがなく、痛くて辛い強力な点滴を行うことは、もう細くなってしまった身体に可哀想だと思います。これ以上苦しい思いはさせたくないという思いの方が強く感じます。

自然のままに生きて、そして後は天に任せることが家族ができる最善の愛情であり見守り方だと思います。

「今日はしんどないよ」と話してくれたたように昨日よりは幾分顔色が良くなっています。入院したことから父が病名を気にするので、「肺炎を起こしたよう」だと伝えました。肺炎も併発しているので呼吸が困難になっているのです。「肺炎だと病名が分かったから治していこう」と、とても辛い台詞でした。父に目を見られたら潤んでいるので見破られたかも知れませんが、大きかった父の目は何故か小さくなっていて、私達の顔が見えていないような気がします。

ベッドの上で寝ているだけで、自力で横を向くことができない姿をこれまで想像することもできませなでした。命の灯は灯っているけれど、それほど長くは灯っていないと感じるような生きる力の弱さを感じました。

長くて「一ヶ月」という言葉が頭に詰め込まれました。父と過ごせる時間は、これまでと比較にならない程、とてもとても短い時間となりました。心の感じ方によって時間の長さは違いますが、短い夏がカウントダウンを始めた日となりました。