コラム
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2014/8/18
1518    家元制度

芸術家の先生と懇談しました。芸術の世界では家元制度があり、長い歴史と全国にいるお弟子さんがその伝統を支えています。家元に集う全国で活躍している先生方は、自分の組織を大切にしています。自分が所属している組織、自分が成長させてもらっている組織、自分が愛する組織を守る気持ちは絶対的です。家元を中心に文化と伝統を守ることが絶対的価値を持っていることを聞きました。

「家元を中心としたこの世界を守ることは当たり前のことで、自分が所属している組織を守らない集団はありません。家元は絶対に死守するという気持ちを持っています。単に給料をもらっているから属しているという集団とは自覚が違うと思います。そんな緩い組織ならこの社会から消えてしまいますよ」と話してくれました。

そして「派閥抗争はありません。そんな派閥抗争をしている集団は消え去る運命にあります。自分たちの組織内で争ってどうするのですか。歴史から学ぶと明らかです。自分達の組織は自分たちで守るという強い自覚を持つ必要があります。これは会社組織にも通用する価値だと思います。自分の会社がどうなっても良いだとか、誰かが守ってくれると思っているようなら危ないと思います。もし組織の代表者を社会で活躍できるように送り出そうとするなら、絶対に落としてはいけないのです。組織の代表を落とすようなことがあれば、その組織は社会で受け入れられていないということです。自分達の組織が否定されて平気でいる集団は弱い組織ですから、競争社会で生き残れないと思います」とも話してくれました。

歴史という大河の流れを勝ち抜いてきて現代に残っている家元制度は、全て自分達の代表である家元を守り、社会で価値のあるものにしてきたのです。負けたらそこで終わりだという意思を持って歴史の荒波から守り抜いてきたのです。

強い集団というものが見えました。自分の組織の代表を守れないことや、代表を送り出すために一致団結できない組織は弱い組織です。代表者を社会で誇れる立場に送り出すために必死で戦う集団が家元制度です。

現代社会における会社は、会社内だけで完結できる仕事はありませんから、社会との関わり、行政との関わり、政治との関わりは絶対に必要となります。そこに意見を言える人を送り出すことが組織の強さなのです。会社内だけで価値観を共有しても社会で認められない価値観であれば意味はありません。会社内で議論した内容が社会で議論されなければ意味はありません。会社の価値観が社会の価値観と相違しているのに、自分達の価値観を発信できない組織は強くありません。

自分が所属している組織を守り続けることで人は社会で存在できるのです。人は社会で生きていますから、社会で受け入れなれない組織にいても自分達の主張は聞き入れてもらえません。組織は団結しなければ守れないものであると強い危機感を持ち、自分は組織の一員であると自覚することで、強い組織へと変貌を遂げられるのです。

歴史に守られた家元があり、そこに属して稽古を続け一流になることから国立劇場の舞台に立つことができる伝統文化があります。自分を育てくれている家元制度を組織構成員が守るのは当たり前ことなのです。

組織から社会に代表を送り出す価値の大きさを感じることができました。