コラム
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2014/6/26
1487    仕事を通じての経験

仕事を通じて鍛えられたことはたくさんあります。仕事によって人は鍛えられますし成長の階段を登ることができます。自分に適していないと簡単に職を離れる人がいますが、実にもったいないことです。給料をもらいながら仕事を覚えて自分を高められる機会を放棄するのはもったいないことです。

長く仕事をしていると楽しい思い出になっている場面があります。

ある時、プレゼンテーションの資料を作成し、上司が幹部のTさんの前で発表する場面がありました。発表用の資料を何度も作り直したので仕上がりは良いと思っていたのですが、発表後の質疑内容からあまり評価されなかったと思い少し残念に思いました。その幹部は仕事に厳しいことから周囲から恐れられていた人です。レベルの高い仕事をしている人だという印象を持っていたので、「きっと不満足なできだった」と残念に思いました。

ところが後日、上位機関に出張した時、Tさんと会話する機会がありました。若い時代ですから幹部室に入ることは滅多にないことで、偶然なのか幸運なのか二人で話をすることができました。

Tさんから「片桐君、この前のプレゼンはとても良かったよ」と話してくれたのです。当日の反応は乏しかったので評価されていないと思っていたのですが、しっかり見て聞いてくれていたのです。続けて「誰が仕事をしているのかを知ろうと思ったら、その人を抜いて見ることだ。片桐君があの仕事をしていることは知っていたよ。だから発表を褒めると発表した人が自分の仕事だと勘違いしてしまうので、褒めなかったという訳です。片桐君がいなければあの発表はなかったと思っているから」と伝えてくれたのです。

見てくれる人はいるもんだと思うと同時に、仕事に厳しいTさんから褒めてもらったことは自信になりました。

まだ20歳代の若かった頃、世代交代の時期で職場の先輩達が次々に定年退職をして、その補充がないという時代に入りました。その当時の上司はこれまでになく厳しい人だったことから、「片桐君には負荷を掛けるから」と言って、最初から二人分位の仕事をしていました。そして退職した先輩達の仕事を次々に私の分担にしてくれたのです。

3人分、4人分と仕事が増えていきました。上司のUさんから「どうだ、後どれくらい仕事が増えても大丈夫だろうか」と質問があったので、「5人分はやれると思います」と答えたところ、「たった5人分か。片桐君なら10人分はやれると答えると思ったよ」と言うのです。定年退職をした先輩たちの仕事ですから、経験と知識が必要な仕事ばかりだったので、4人分の仕事でも結構大変でしたが、簡単に10人分と言うのです。

仕事の分野で言うと、広報、文書、法務、購買、安全、衛生、労務でした。ここで列記すると簡単にできそうに思いますが、これだけの分野を持つとかなり仕事量は多かったのです。

ある日上司であるUさんが話してくれました。「仕事に負荷を与えたけれど、仕事が速いし丁寧にしている。私もたくさんの人と仕事をしてきたけれど片桐君のような仕事の速い人はいなかった」と評価してくれたのです。

そして「先日、退職したTさんが私のところに来てこう言ったよ。『片桐君の仕事量が増えたし、購買の仕事は査定が必要で知識が必要なので、きっと頼って聞きに来ると思い自宅で待っていました。ところが数ヶ月経っても連絡がありません。どうしているのかと思い同僚に電話したところ、残業もしていないし簡単に仕事をしていますよ、と答えてくれました。これには参った。もう私の出番はないなと思い安心しましたが、寂しくも感じました。私が何十年も経験してきたことが、若い片桐君が簡単に遣って退けているのですから』と。Tさんは真面目な人なので片桐君を助けようと待っていたのに、聞いて来ないものだから自分のしてきたことの意味が分からなくなったようだよ」と話してくれたのです。

仕事は増えても関連するものがあるので、5人分が5人分とはならないことを知りました。仕事の隙間を組み合わせていくと5人でしている仕事を1人でもできるのです。ただこの時は相当忙しい時期を過ごしましたが。

でも仕事量があってもやれることは自信になりましたし、とても厳しい上司から評価されたことも自信になりました。

これらの経験は、その後の仕事、現在の自分の活動と存在につながっているのは間違いありません。