コラム
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2014/4/22
1449    加太を語る

紀州語り部の松浦光次郎さんが友ヶ島の観光案内の本を発刊しました。松浦さんにとって二冊目の著書です。平成24年に和歌山城の観光案内本を発刊してから、「次は友ヶ島の案内本を作りたい」と抱負を語っていたのですが、思いを実現させてくれました。松浦さんの和歌山市を愛する気持ちは誰よりも強く、観光案内や講演会に加えて和歌山市の観光に関する本の出版も担う役割のひとつになっています。

松浦さんの凄いところは、観光案内で培った知識と体験をコツコツと積み上げて、それをまとめ上げていることにあります。和歌山市を訪れてくれたお客さんに話をすることや案内することはできる人はいても、それを本にして出版できる人はいません。本にするためには、本物の知識と数多くの経験、そして誰も語っていないエピソードも必要となります。これまで書かれている内容だけで新しい本として出版しても価値はないからです。松浦さんが体験したことや、語り部として話している自分だけの知識を書いているので、この出版には価値があるのです。

そして友ヶ島の冊子の出版を記念して、友ヶ島観光に関する講演会と加太への現地案内会を予定しています。行動力が出版というものにつながっていると感じています。

ところで、私と松浦さんの出会いは、1999年に和歌山県の自然を舞台に開催されたジャパンエキスポ南紀熊野体験博がきっかけです。当時、私はこの実行委員会の広報出展部で仕事をしていたのですが、そこに松浦さんが博覧会の資料を求めて訪ねてくれました。当時の部長を訪ねてくれたのですが、不在だったことから私が松浦さんと話をしました。当時の私は和歌山県の観光資源について学び始めたところだったので、松浦さんの豊富な知識と実践に裏打ちされた話を眩しい思いで聴いた記憶があります。観光案内をするためには現場経験と資料に裏打ちされた正しい知識、そして楽しいエピソードを持っていることが必要ですが、それらの要素を兼ね備えていました。

そして和歌山市の観光語り部として活動しているのに和歌山市以外の観光についても関心を持ち、勉強しようとする熱い姿が伝わってきました。この人は勉強家であり和歌山県のことを愛している人だなと感じてからの付き合いですから、今日現在でもう20年近くの付き合いになります。

和歌山城と友ヶ島の二冊の本を読むと、和歌山市には魅力的な観光資源があり、全国に誇れるものであることが分かります。和歌山県を発展させるためには県民が故郷に誇りを持つことが必要だと言われますが、和歌山城や友ヶ島の歴史を知ると、和歌山市のことを誇りに感じます。単に観光案内だけで終わらせることなく、和歌山県に誇りを持たせるような内容に仕上げていることを感じます。

この冊子を世に送り出すことになったのは、故郷に誇りを持ってもらいたいと気持ちと和歌山県発展に対する熱意があったからです。観光の分野で和歌山県に貢献したいと思う気持ちがこの冊子に宿っています。

自分ができること、自分の得意分野の知識を伝えることは、社会の発展につながるものです。松浦さんには和歌山市の語り部としてのたくさんの活動歴と知識があります。それを外部に惜しげもなく伝えるための出版です。一人の知識と体験がみんなのものになりました。