コラム
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2014/4/4
1438    海士町山内町長

島根県の海士町の山内道雄町長を訪ねました。離島という本土と比較して不利な条件にも関わらず、海士町はとても元気な空気に包まれています。その理由は山内町長の行政手腕と人柄にあると思います。約3時間、懇談と意見交換させていただき、リーダーが町を変えることをしっかりと確認できました。印象としては柔らかいけれども筋は通すイメージがあり、山内町長以前の海士町は知りませんが、町を変革させた原動力になっていると感じます。

町の産業政策はすべて公設民営で行い、やる気のある事業者に指定管理を委ねることで事業を任せています。公設ですから建物や設備への初期投資が必要ですが、攻めなければ町は衰退することを議会でも訴え予算化しています。それをUターンやIターンの、しかも若者に事業を任せているのです。時期を捉える力と決断力、そして人の能力と情熱を信じて任せる度量を有しています。そして事業を受けた経営者は売り上げを伸ばし、外貨を稼いでいるのです。しかも海士町の名前を首都圏に売り出すことにも貢献しています。

町長と懇談する機会をいただき、その後、町役場の課長から事業説明と島内の案内をしていただきました。山内町長は「折角、和歌山県から来てくれたのだから課長が対応するように」と指示をしてくれたのです。そして「分からないことがあれば何でも課長に質問して下さい。島の外の人の感想や意見が島に必要なものを知る機会となり、行政運営に役立つのです」と付け加えてくれました。

そして案内してくれた課長に「いまの町長になって島は変わりましたか」と質問すると、「変わりました。山内町長でなければ産業振興も図れなかったと思いますし、それまでのように衰退傾向にあったと思います」と答えてくれました。町を民間感覚を持って改革する強い意志と、職員を引っ張るリーダーシップを有する町長の姿を感じます。

山内町長のリーダーとしての凄いところを挙げます。

  • 町長の給与は就任以来50パーセントカットしていること。その結果、課長以下の職員さんも大幅な給与カットを申し出るという行為につながっています。職員さんは日本一安い給与で働く公務員となっています。
  • 役場の産業課をフェリー乗り場付近に移転させ、一年365日無休にしていること。今では土曜日曜が休日でないことに慣れていて、観光客を迎えるフェリー乗り場で仕事をすることで、お客さんのニーズを直接把握することに努めています。職員さんの意識も行動スタイルも変えさせています。
  • 毎日の公務を終えた後の時間を、視察に訪れた人や島内の皆さんとの懇親の時間に充てていること。一年を通じて人と接しています。しっかりと意見を聞き取り、視察に来てくれた人をおもてなしの心で迎えています。
  • 公共事業以外に産業がなかったのですが、水産加工業、畜産業などの産業を作ったこと。島では当たり前のものを、島以外では当たり前でないことに注目してブランド化しています。
    サザエカレー、隠岐牛、岩牡蠣「春香」、そして塩などを次々にブランド化を図り、首都圏に出荷しています。

島のキャッチフレーズである「ないものはない」は、町長と話していると、人間として欲しいものは海士町にはあるという自信が漂っていました。