コラム
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2013/12/16
1380    余韻を残す

和歌山市にあるコミュニティエフエム局のエフエムワカヤマ。楽しい番組と災害発生時は防災機能を果たしてくれるので、地域にとって娯楽と安心を提供してくれています。理事長が来るべき新しい年に向けた抱負を語ってくれた話があります。

「もう一段高いレベルの番組を創って欲しい。今のままでも十分ですが、来年はそれぞれの個性を発揮して下さい。それは車でラジオを聴いてくれているリスナーの皆さんが目的地に到着した時に、もう少しこの番組を聴いていたいな、と思ってくれる番組にして欲しいということです」。エンジンを止める瞬間、もう少し聴いていたいと思わせることは簡単なことではありません。しかし、もしそれが実現できたら、ラジオは車を運転して聴いているリスナーにとっての主体になるってことです。

「もう少し聴いていたい」、「この話の最後まで聴いてみよう」と思ってもらえる番組があれば、パーソナリティがリスナーの心に何かを訴えていることになります。

姿は見えていなくても言葉でつながっている。地域にあるラジオは、そんなであってほしいと思います。

このことは人間関係でも言えることです。「この人ともう少し一緒にいて話をしていたいな」、「もう懇親会は中締めの時間になったの。もう少しここにいたいな」と思ってもらえる人間関係が理想です。余韻が残るような時間を過ごせることが理想であり、素敵な人間関係だといえます。

そのためには、底が見えないことが必要なことだと思います。器の底まで見えてしまうと楽しみがなくなります。器の底がまだ見えなければ楽しみが続きます。もう少し聴いていたい番組とは、どんな展開に発展していくのか分からないのでワクワクさせてくれるものであり、人間においては話をしていても底が見えない魅力の尽きない人だということです。

一緒にいて80パーセント満足できたら最高。60パーセントの満足でも納得したいと思います。それが余韻を残した出会いや会合ということです。

議員の仕事は皆さんの前で話をする機会があります。どれだけ準備をしていても、どれだけ会場の雰囲気に合わせたとしても、100パーセント言い尽くせることはありません。但し私の場合は、事前に準備することはなく、会場入りして雰囲気を感じながら挨拶の内容をその場で考えています。そのため話したいことが漏れることが多いのですが・・・。

だから話し終えた後は、「このことにも触れたかった」だとか「あの話題を言うのを忘れていた」と思います。自分では十分ではないと思うことがありますが、そんな時には、「まだ引き出しがあるので余力があるということ。次の機会も参加したいと思ってくれるような余韻になっているかも」と良い解釈をするようにしています。

車のエンジンを切っても聴いていたいと思ってくれる番組作りは、決して簡単ではないと思います。でも番組として目指すべきところであり、達成したい理想でもあります。人間関係においても、「今日の時間だけでは物足りないので、もう一度会いたい」と思ってもらえることが理想です。余力があるということは余韻を残せることです。去った後に、相手の心に香水の香りを残せるようにしたいと思います。

余韻を残せる人であるために、いつも余力を残せるようにしておきたいものです。