コラム
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2013/8/27
1315    プロの仕事

元サッカー日本代表のハンス・オフト監督の話を伺いました。オフト監督は、まだ日本サッカーが一度もワールドカップに出場していない時期に代表監督を務めた方です。日本サッカーが世界に羽ばたく直前の、そして世界に通用するチームになる前に現在の礎を築いてくれた方です。

オフト監督といえばドーハの悲劇を思い出しますが、あの時の日本中の悔しさが、その後の日本サッカー界を強くしていったように思います。

オフト監督の教えとは、基礎の重要性を説いたことだそうです。

「難しいことを10回に1回やるのは実に簡単なんだ。しかし簡単なことを10回続けて成功させることは難しい。プロの仕事とは、そういうものなんだよ」という言葉を残していることを知りました。

1回だけできてもプロは誘いに来ません。どんな状況においてもどんな相手と戦っている時でも、確実に求められる技術を成功させる力をプロは待っているのです。それは練習を繰り返して確実に自分のモノにした技術のことです。練習で10回に1回だけできる技術を試合で成功させることはできません。練習で10回やって10回できても、試合で成功させられるかどうか判らないほどだからです。

プロとはどんな時でも安定して実力を発揮できる人のことを言います。ビジネスパーソンでも同じで、昨日のプレゼンテーションは良かったけれど、今日のプレゼンは良くないと評価されるようではプロの仕事とは呼べません。

常に周囲を安心させるだけの力を発揮する人がプロなのです。そのためには10回のプレゼンの練習を行い、その全てで実力を発揮できる力を備える必要があります。プレゼンの内容を十分理解し、質疑にも答えられるようにしなければなりません。

大事なプレゼンを任されたのに、「今日は調子が悪かった」ではプロとは言えません。一流と呼ばれるプロ野球選手のように、1シーズンを通じて打率3.00割を打てる打者。毎シーズン10勝以上勝てる投手。そんな選手がプロと呼ばれるのです。

一流、つまりプロのビジネスパーソンは常に安定した力を発揮できる人のことです。安定した行動が取れると、安定した結果を残すことができます。

そのために日頃から勉強と研鑽を積んでいます。本を読む、資料を作成する、優れた人と会う、懇親会に出掛ける、文化に触れるなどの時間を、惜しむことなく費やしています。

難しいことを10回に1回やることを目指しているのではなくて、簡単なことを10回続けて成功させることを目指しているのです。仕事は長丁場ですから、一回だけの成功では評価されないのです。毎年。毎年、同じような実績を上げられる人がプロであり、一流の人物なのです。

誤解しないで欲しいのは、「難しいことに挑戦するな」と言っているのではないということです。難しいことを練習して、それができるようになるまで続けることです。難しいことを続けて自分のモノにすると、それが10回やれば10回成功するようになります。自分のモノにしてしまうとそれは難しいことではなくて、簡単なことになってしまうのです。

安定して確実にできるようになる。そのための努力は惜しまない。それがプロなのです。