コラム
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2013/6/6
1268    横綱相撲

東進ハイスクールの林修先生。「いつやるの。今でしょ」の名文句の先生です。その林先生がインタビュー答えて次のようなことを言っていました。

「東大を受験して合格するような生徒の特徴はありますか」という主旨の質問です。それに対して林先生は「横綱相撲をとりますね」と答えました。

続けて「できる生徒は自分の型を持っています。解答を導く型を持っていて絶対の自信を持っています。しかしそれよりも凄い生徒がいるのです。それは横綱相撲をとれる生徒です。どんな問題や質問にも対応できるタイプです。先生から効率の良い解答方法を教えられると「そんな考え方もあるのか。これは取り入れよう」とする柔軟や態度をとります。どんな相手に対しても勝てる横綱相撲です」というものです。

受験でもビジネスでも同じだと思います。この形になったら負けないという型を持つことは大切なことです。相手があっても自分との戦いである試験でも、自分の得意な形を持っていると精神的に優位に交渉や試験を進められます。絶対的な形を持つまでには相当の勉強をしているので、型を持っていることは型を持っていない人よりも大きな強みとなります。

しかしその上を行くのが横綱相撲をとれる人です。絶対的な型は持っていないけれども、どんなビジネスでも試験でも勝てるというタイプです。柔軟でしなやかな強さを秘めたタイプの人がそれに該当します。相撲の横綱でいうとかつての大鵬関や現役の白鵬関のようなどんな相手でも、相手がどんな戦法でかかってこようが、柔軟に対応し勝ってしまうタイプの横綱です。勝つというよりも負けないタイプの人が、横綱相撲がとれるタイプだと思います。

負けないためには、相手の良いところを学び吸収できる度量。そして自分を型にはめないで伸びようとする姿勢が必要です。自分の型が最高の自分であると思ってしまうと、柔軟性がなくなります。型があると勝てるのですが、未知の巨大な相手が現れた時や、未知の試験問題が出された時は対応できなくなります。

横綱相撲の強さは、どんな相手が出現しても、未知の問題が出題されても対応できる強さがあることです。それは自分にないものを吸収していくことで常に伸びていることもありますし、未知の問題に対しても経験やこれまでの学びから類推して答えられるからです。司法試験に良く似ています。司法試験は過去問の中から類似した問題が出るとは限りません。そして範囲が広いため基礎問題など全てを覚えることもできません。基本的な知識を基にして推測、そして解答する能力が求められると聞いています。基本ができていてどんな事案にも対応できる柔軟性を持っていることが求められるのです。事件は同じことが繰り返されるものではありません。社会で起きることも全く同じことが繰り広げられるものではありません。過去に学び歴史に学ぶことは絶対必要ですが、過去や歴史と同じ事案に遭遇することはありません。

歴史を学ぶ意味は覚えることではなくて推測することにあります。何故、その人物はそのような行動を起こしたのか。事件が解決に至ったのはどのような交渉術があったのか。歴史は全て結果が分かっています。そのため登場人物や事件の背景、そして結果までを見通せるので、後世の人は歴史を推測することができるのです。推測する能力を身に付けることが歴史を学ぶ意味であり、どんな案件にも対応できる横綱相撲をとるための学びなのです。