コラム
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2013/4/15
1236    覚悟

メジャーリーグも開幕しました。今年もニューヨークヤンキースのイチロー選手に注目しています。日本人メジャーリーガーとして活躍して欲しいと願っています。日本でイチロー選手と同僚だった田口さんの記事がありました。少し前の記事ですが、オープン戦初戦前のイチロー選手に質問をした読売新聞の記事(平成25年3月19日、夕刊2面)です。

「新しいことの始まりには不安はあるのか」。

「不安や心配は、その時々に置かれている状況によります。必ず言えるのは、何かを始める時には覚悟がいる。それだけは確かです」と答えています。

どんな人でも新しい環境、新しい職場などへの不安があります。始まりは不安が期待よりも先行します。時間と共に期待が不安を追い越していくのですが、不安があると萎縮してしまうので行動や考えが小さくなります。そのため最初は実力が発揮できないのです。

そして期待が不安を追い越すために必要なものが覚悟なのです。覚悟は物事を前に向いて進める力を持っています。

田口さんは続けます。「覚悟。その言葉に少なからず衝撃を受けました。メジャーでも数々の記録を打ち立て、いまや世界最高峰の選手。彼でさえ、事を起こす時、新しいスタートを切る時には、退路のない覚悟、全てを受け入れていこうという覚悟を胸に抱いているのです」。

退路を断つ決断は中々できるものではありません。私達は何故この場所にいるのかという問いに対しては、今いる場所が快適だからというのが本心です。快適な場所から離れることに抵抗はありますし、自らの決断で離れることは難しいことです。

しかし何かを始めるためには覚悟がいることは確かです。覚悟がなく退路を断っていない場合、新しいことを始めても前に進みません。戻れると思う気持ちがあるからです。

イチロー選手の場合、慣れて居心地の良い環境であったと思われるシアトルマリナーズを出て、厳しい環境だと思われるニューヨークヤンキースに移籍しました。新しいチームでレギュラーになれる保障はなく、若手でないだけに育ててくれる約束もありません。これまでの実績はあってもヤンキースでの実績はゼロですから、新しい挑戦を始めなければならなかったのです。そして新しいシーズンもヤンキースでプレイすることになりました。レギュラーが保障されていない環境の中で挑戦するという覚悟でチームに残ったのです。

私達は、果たしてそんな強い覚悟を持てるのでしょうか。移籍、異動、環境の変化は挑戦する節目になりますが、覚悟ができていない場合があります。自分の意思で移籍や異動になるのではなくて、組織や会社の命令で異動になることが多いので、覚悟が形成されていない状況からの始まりとなります。プロかどうか試される時です。

以前のコラムにも書きましたが、人生の目標として富士山に登るのか、近所の山に登るのかを自分で決めなければなりません。目標を定めた上は、覚悟を持つことが大事なことです。その覚悟がその日その日を支配するのです。

覚悟が備わっていると遠くまで行けます。覚悟がないとその周辺をうろうろすることになります。時々、社会の出発点という港を出てから「随分遠くまで来たなぁ」と思う時があります。そう感じることは今に至るまでの時々に覚悟があったということです。これからも遠くまで行けるように覚悟を持って突き進みたいものです。