コラム
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2013/1/24
1184    人格を磨く

阿弥陀寺の高木歓恒住職の講話から学んだことです。

心の苦悩は取り除けないのですから他人の責任に転嫁しないで、できなかったことは全てお任せすべきです。お任せするとは人格を磨くことに他なりません。見えないものにお任せをすることは人格を磨き高める以外にないのです。

日本人は古から高い精神文化を誇っています。その基本的な心構えを持つことで人格は高められます。基本は次の5つの言葉を心から使えるようにすることで人格は磨かれます。

「ありかとう」、「お陰さま」、「いただきます」、「ごちそうさま」、「もったいない」の5つを使いこなすことです。全てが感謝につながる言葉です。

「ありがとう」は有り難いと書きます。つまりこの世にあることが難しいことが実現できていることに対する感謝の言葉が「ありがとう」なのです。対価がないのに実現してくれることを有り難いと言いますから、英語のThank youとは全く別の意味です。

Thank youはGive and takeから来るものですから、対価を求めて実現したことに対するお礼の言葉です。「ありがとう」はGive and takeの関係から来る言葉ではなくて、自然や相手の気持 ちに対して感謝の気持ちを伝える言葉です。

「お陰さま」も感謝の気持ちを表す言葉です。「お」は丁寧語、「さま」は尊敬語なので、大切な部分は「陰」です。陰とは見えないものを指します。見えないものを丁寧語と尊敬語で挟んでいる言葉が「お陰さま」ですから、見えないものに感謝することが「お陰さま」です。長年会っていない人と偶然出会った時、こんなことを尋ねられることがあります。「これまでどうでしたか」。それに対して「お陰さまで○○」と答える場合があります。長年会っていない人にはお世話になっていないのに、お陰さまという感謝の言葉で答えています。

それは直接、その人にお世話になっていないけれども、これまでの間、多くの人のお世話になって今まで健康で生きてこられたこと、そのことに対する感謝の言葉であり、あなたにも間接的にお世話になっているのですよと気持ちを表しているのです。

見えないものに感謝すること。それが「お陰さま」であり、日本の精神を代表する感謝の気持ちを表す言葉です。

「いただきます」とあなたの命をいただいて、私の命に代えさせていただきます。という感謝の言葉です。「ごちそうさま」の「ご」は丁寧語であり、「さま」は尊敬語ですから、間の文字「馳走」が主役の言葉です。馳走とは走ること、つまり遠くにあったものをいただけるという恵みに対する感謝の言葉なのです。

「もったいない」は世界語になりました。「勿体無い」のオリジナルは「物体無い」から来ているものです。この意味は物の命を粗末に扱うことはしてはならないということです。靴にも紙にも割り箸にも、物の命が宿っています。それが自然崇拝であり、仏教が伝来される以前からわが国が大切にしてきた精神文化なのです。

物にも命がある。だから大切にしなさいという教えです。物にも命がありますし、物を作ってくれた人の心や命もそこには宿っています。物を大切にすることを「もったいない」という言葉で表しています。決してケチという意味ではないのです。

人や物、自然などすべてのモノに感謝する言葉が日本語にあります。感謝を表す言葉を使い自覚を磨き高めていくことで、人格者に成長することができます。人格を磨かない人は年齢を重ねても周囲に不満を漏らすだけの人となります。不満や不平、批判などの腹立ちの言葉を使う人は周囲の人に嫌な思いをさせることになりますから、人格者にはなり得ません。

人は一生を通じて人格を高めていきます。人格を高めることが日本人として生きることなのです。