コラム
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2013/1/23
1183    決断に至るまで

平成25年新春のニューヨークヤンキースのイチロー選手の話題から。平成24年12月に開催されたイチロー杯争奪学童軟式野球大会での挨拶の中に次のようなコメントがあったことを知りました。

「今まで生きてきたなかで大きな決断がいくつかあったが、常に自分で決断してきた。(君たちも)将来、必ず大きな決断をしなくちゃならない時期が来ると思う。そのときに難しいことに立ち向かっていって決断すること。これができる大人にぜひなってほしい」。

このコメントは日本経済新聞、平成25年1月3日の35面に経済されていた記事で見つけたものです。付け加えて「大人こそ耳を傾けなければならない言葉だった」とこの記事の筆者は書いています。

大きな決断を自分で行うことの難しさは大人には分かります。それは自分で決断をすると、自分が責任を持つ必要があることに尽きます。大人になると、できれば自己責任ではなくて他己責任にして責任回避をしたいという心理があるからです。そのためできることなら上司に決断してもらって、その結果責任は上司に取ってもらいたいと思う場合があります。組織で仕事をしていると役席があり、専決権限者が決裁し責任を持つことになります。専決権限者以外の人は決断する必要はなく社会に対する責任は生じません。そんな仕事に慣れてしまうと決断を下せなくなります。

決断は日々の小さな判断を数多く行うことによって訓練されて行きます。大きな決断は置かれた立場、資金力、勝敗を分けると考えられるデータなどによって下すことになります。

しかし最も大事なことは決断をするまでに、勝つための決断が可能になるように布石を打っておくことです。状況や現場、これまでの経過を何も知らないで決断することは無謀というものです。決断を下すことは、目を閉じて飛び出すような無謀とはまったく意味が違います。

勝てるような交渉や資金調達、そしてキーパーソンとの事前折衝などを行った上で、勝機を見て判断することを決断といいます。

歴史研究者の話を聞く度に思うことがあります。それは、勝者は常に策略を張り巡らせて勝てる戦いをしていたということです。大袈裟に言うと、歴史上の全ての勝者は、置かれた状況を把握し、それを打破するために必要な重要人物と接触し、好ましい結果を導くための事前調整を行っています。そして歴史では決して表に現れませんが、絶対に必要なことは資金力を確保しておくことです。勝者は資金力を持っていたことを知らない人が多過ぎます。

つまり絶対に勝てる状況を作り出してから決断しているのです。

イチロー選手も大きな決断をするためには事前準備を行っています。日本のプロ野球では誰も到達できないような実績を積み重ね、メジャーリーグでもシーズン200本安打という目標を掲げ厳しい練習を続けています。全てにおいて自信を持って決断する状況を作り出しているのです。

何の準備もなしに、勝つか負けるか分からない状況で決断することは困難であり無謀です。勝負する迄の準備と、必要な戦略を立案し継続して取り組んでおくことで決断できるのです。