コラム
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2013/1/18
1180    伸びるまでの期間

堀場製作所の堀場厚会長兼社長と重量挙げでロンドンオリンピック銀メダリストの三宅宏実選手の対談した記事が、日本経済新聞(平成24年12月25日、10面)に掲載されています。

堀場社長「スポーツはいくら努力をしてもなかなか向上しない。日々努力して、あるときポコンと上がる。上がって、これでわかったと思ったらまた横ばいになる」。

三宅選手「最初はどんどん上がっていくんですが、ある程度に行くと壁にぶつかって停滞して、けがをするとまた下がっていく。そのときに自分がどうしなきゃいけないか。一生懸命続けていると、何かをきっかけにまたパンと伸びていく」。

堀場社長「私が社長になった途端に、会社は3年連続で減益となった。ある信念のもとでいろいろ改革をしていて、私の父は「信念でやっていたら、いつか結果出るで」と言ってくれて、継続したら急速によくなってきた。この3年間を我慢できるかどうかですね」。

仕事もスポーツと同じで、最初は伸びをかんじるのですが、そこからはやっていても中々成果は表れなくなります。一定の水準までは達することができるのですが、そこに辿り着くと広い大地があるような感覚になります。自分が立っている地点には緑もあるし水も食べ物もあります。しかし先を見ると乾燥した地平線の見えるような広い大地があるだけで、緑もなく、環境が変わるような登り道も見えないのです。

安心できる場所から、先の見通しが何も見えない赤い大地に向かって歩き出すような感じです。さて、ここから踏み出せるかどうかが、ここから伸びるかどうかの分かれ道になります。最初に上がっていくのは、比較的角度の緩い壁を登っているようなもので、登り切るとそこにはオアシスが存在しています。頑張って登ったのですから、休息や次の場所に向かうためそこで数日間滞在することになります。

でもその場所に安心してしまうと、またはこれから挑む赤い大地に恐怖心を抱いてしまうと、先に進めなくなります。しかも先に歩き出しても、直ぐにオアシスは見つかりませんし、登る場面も訪れません。ここが停滞期なのです。どんなに頑張っても結果がでない。伸びている感じがしない。そんな感覚に襲われ歩みを止めてしまいそうになります。まだ数日間の行程であったら引き返すことも可能ですから、戻りたいと思うこともあります。

しかし停滞期とは新しい場所に立つために必要な行程であり、一段高い仕事をするための修行の期間なのです。成長していない、何も進歩していないと感じる時期は苦しい時期ですが、何の拠り所がなくても、そこを頑張れるかどうかが横ばいの時期を抜け出すために必要なことです。突然緑の景色が現れる。そこがポンと上がる瞬間なのです。

何も伸びしろを感じない行程を歩き切った時に、突然、それまでの成果が現れるのです。その瞬間は少し成長したことを実感できるのですが、再び停滞期に入り伸びを感じないという同じようなことを繰り返すことになります。伸びているという実感ができなくても、歩んでいれば着実に能力は向上しています。この先が見えない時期、伸びを感じない時期に歩み続けられるかどうか。この先、どこまで辿り着けるのかの分岐点です。